■もう元には戻らない
そうだとしてもゆいだけでは流石にお山には行けないので母が帰ってくるのを待った。
しばらくすると、がちゃりと玄関の戸が開く音がする。
ゆいは慌てて「ママ!!」っと叫びながら玄関へ走ると、母ではなく、ゆうくんが家に帰ってきた。
「お兄ちゃん?!どこいってたのー?!しんぱいしたんだよー!」
っと言うと、「ごっ …ごめんなさっ」っと、いきなり叫んでしまったゆいに兄はびっくりしては再び扉を開けて逃げようとする。
「まって!ごめんね!おねがいいかないで!」っと、ゆいは兄の服をつかんで逃げられないように抱きしめて捕獲する。
兄はそれでもビクビクと体を震わせながら扉をつかんで体を少しだけ丸める。
「お兄ちゃん、もしかしてお山に行ったの??」っとゆいは声をかけると、「ううん…お山には寄ってない…岐阜に寄っただけ…」っとプルプルしながら返事をする。
「お山はぎふってとこにあるってゆいしってるんだよー??ほんとーにいってないのー??」っと疑うと、兄は一生懸命首を縦に振ると隙を見ては自分の部屋のほうへ走っては逃げ出す。
「あっ…ちょっとまって!」っと、ゆいは兄を追いかけて走ったが流石に間に合わず、兄は自分の部屋にこもっては鍵をかけてしまい、ゆいが入れないようにされてしまった。
仕方なくゆいは兄の部屋から離れるとがちゃりと今度は母が家に帰ってくる。
「お母さん!ゆーくんかえってきた!」っと母に伝えると、「そうなのね…見つからなくて心配したけど良かったわ…」っと、ホッとした様子になる。
「でもどこにいってたのかおしえてくれないよー」っと言うと、「そう…どっかに行く時は言ってくれないと、心配なんだけど…」っと母はつぶやくと、「とりあえずご飯食べましょう?」っと切り替えた。
「ごはーん♪おにーちゃんごはんだってー!」っとゆいは再び兄の部屋の前に行っては大声を上げる。
それでも兄はでてくる様子が無い。
もう、お兄ちゃんは明るくはなってくれないのだろうか…。
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