■消えたお兄ちゃん
「ねえゆいちゃん!」
っと母が慌てて、友達と遊びに行って帰ってきたゆいの元へやってくる。
「どうしたの?ママ?」
っとゆいがキョトンとしていると、「ゆうくんが見つからないの…、どこに行ったかわからない??」っと慌てた様子で言う。
「ゆうくんが?!…でもお兄ちゃんはよくとしょかん行ったり、ひとりでよくあそびにいくから、ふつーじゃないの…?」っと聞き返すと、「どこに行くのかも言ってくれないまま消えちゃったのよ?!」っと母は精神的に不安なようだ。
たぶん、自分のせいで出てったのではないかと不安なのかもしれない。
でもたしかに最近のゆうくんは変なままだし、このままだとなんだか心配になる。
「わかったー!じゃあゆいはとしょかんにいるかみてくるよー!」っと言うと、「ありがとう、私も探してくるから…」っと、母も外に出ては車に乗った。
ゆいが図書館に着くと、静かに兄をキョロキョロと探した。それでも見つからないので、受付のお姉さんの元へ行っては、「おねえさんー、お兄ちゃん今日来ませんでしたか?」っと問いかけてみる。
すると、驚いたように「ゆいちゃん久しぶりねっ、でも残念、今日は来てないわ、前はいつも来てたのに、最近はずっと来てくれないわよね」っと答えた。
兄は完全にここの小さな常連さんになっていて、珍しい容姿もあり、顔も名前も覚えられていた。
そんな兄が、最近来てないというのは、外出禁止にあったり閉じ込められたり、特に今は外になど出る様子もなかったから、お姉さんは心配してくれてたのだろう。
「だいじょーぶ、今はちょっとごだごだしてて来てないだけで、落ち着いたらまた来てくれるよー♪」
っと、これ以上心配されないように、ゆいはお姉さんに明るく言った。
図書館にいないとなると一体どこに行ったんだろう…?
兄が他に行く場所なんて、そういえば浮かばない。
とりあえず家に帰ると、帰ってきていないか静かに兄の部屋に入った。
それでもやっぱりいないので、落ち込んでいると、兄の机に新聞とメモ帳となにやら本が置かれていた。
ゆいはそれを見ては近づくと、どうやら一時期話題になったお山の件について調べていたような形跡だった。
まさか…
お兄ちゃんはひとりで登りに行ってる…?!
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