■名無しのプレゼント
学校からもどってくると、母がゆうくんの髪を手入れしている。
ここずっと、放置していたせいですっかり兄の髪は伸びてボサボサになっていたので、綺麗にしているらしい。
そんな光景だが、ふたりは全く会話する気配がない。
「おかえりー
そういえば、ゆいちゃんに手紙が来てたよ」
っと母が机の上に置かれた膨らんだ封筒をゆいに渡した。
それを受け取るとゆいは封筒の表と裏を見るが、名前が書いていない。
「だれかなー?なまえがないよー!」っとゆいが言うと、「ええ、なまえが書いてないのよね、東京から来てるみたいだけど…」っと母は返した。
「とうきょー?!」っとゆいは叫びながら、真っ先に思い出すのははづきちゃんくらいだ。
ゆいは封筒を開けると、可愛い小鳥の髪留めが入っている。
白と黒の二つずつ二種類入っていた。
「なにこれー!可愛い!何のキャラだろ??」っと思わず、ふわふわな小鳥をぷにぷにしながら眺める。
すると封筒から1枚手紙が落ちてきた。
それを拾って中を見ると、"二人とも仲良くしてね"っとだけ書いてある。
はじめははづきちゃんなのかと思ったが、はづきちゃんは兄を殺したがっていた。
そんな子がこんなことを書くのだろうか…。
それとも、はづきちゃんも母のように気持ちが曖昧なままなのだろうか…、よくわからない。
ゆいは静かに小鳥の髪留めをカバンにしまうと、再び母と兄の方へ戻った。
「ねえねえ、ゆいちゃん
ゆうくんはお母さんと同じ髪型が似合うと思うの」っと母は兄の髪を結んで遊んでいる。
それでもゆうくんはしゃべらずにピクピクとしている。
母は大人しい兄には触れやすいようなのだが、反応がよくない兄を見てはちょっと寂しそうな顔もする。
「ほんとだ!こうしてみるとママとお兄ちゃんってなんだかんだにてるもんね!」っとふたりをゆいは見比べる。
「そう?やっぱり親子だから…」っと、母は兄を見下ろしては頭をなでる。
頭を撫でられても兄は、再び縮こまるように体を丸めた。
母が心を開けようとしても、今度は兄の方が拒否をしてしまうようだった。
でもさすがにずっと自分を閉じ込めた母に、そう簡単に心を開けるのは難しいのだろう。
二人にはまだまだ時間がいる。
けれど誕生日までに間に合うのかな?
誕生日が来ても、母はこのままだといいけれど…。
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