■悲しい想い
今年はとにかくいろいろあったが、ゆい達はあっという間に年を越してしまった。
大晦日に大掃除をし、年もおうちも綺麗になった気持ちになった。
「ねえ…」
っと、だいぶ落ち着いてきたのか、部屋から出てきた兄のほうから声をかけてきた。
あれからだいたい1週間はたっただろうか…。
兄の腕も嘘のように、いつの間にか綺麗に治っていた。
ゆいは驚きながら、「どうしたの??」っと聞くと、「これ…なに?」っと、ゆうくんが地下室から出てくる前にすごく騒ぎになった、お山の感染症の件の新聞を見せてくる。
「うん、それ、すっごくニュースになってたよー!
ゆうくんがでてきてからなぜかおちついたみたいなんだけどね…
でもまだへーさされてるらしいよー!」
っと説明する。
それを聞いてはゆうくんは興味深そうに新聞をみては、再び何もしゃべらなくなってしまった。
「それより…お兄ちゃん、学校はどうする?
もうすぐはじまっちゃうけど…」っと続けて問いかけてみる。
すると、兄は「いかない、…いじめられちゃうもん。お母さんもそのほうが安心するって言ってた…」っと縮こまりながら弱気になったように言う。
兄は部屋からようやく出てくるようにはなったが、しゃべるようになっても完全に周りを怖がる子になってしまった。
もともと人見知りではあったが、さらに話しかけられる度にビクッと体をはねらせ、人が怖くて仕方が無い子になってしまった。
けれど、少しずつ喋ってみると、ようやくゆいとだけ喋れるようにはなってきた。
それでも、母や父とはあまりしゃべれなくなってしまった。
「それとね…お母さんになるべくストレスは避けて欲しいって…
出してもらった代わりに、嫌なことがあったら必ず言うっていう約束…したんだ」
っと体を縮こませながらいう。
そんな弱くなってしまった兄を見て、私はすごく悲しくなった。
「だいじょーぶっ、ゆいがちゃんとがっこーにいかせてあげるから
学校楽しくするってやくそく、まだ守ってないもんね♪」
っと、それでもゆいはゆうくんを元気にしたくてにっこりと微笑んだ。
「無理だよ…
もう… 怖いもん…」
っと、兄は深く沈んだような顔で再び部屋に戻って行った。
その変わり果てた兄の後ろ姿を見て、どんどん悲しくなる。
でも兄を幸せにしたい一心だけは変わらなかった。
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