■約束
しばらくすると、「ゆいー」っと父の声が控えめに聞こえ、大きな手がゆいの体を揺さぶってくる。
ゆいはあの後、すこしだけ寝てしまったようで「ぱぱ」っとむくりと起き上がる。
「今お母さんはお風呂に入ってるんだ、だから今のうちだから、ほら」っと父はゆいに鍵を見せつけた。どうやらゆうくんが閉じ込められてる地下の鍵のよう。
それを見るとゆいは「ゆうくんにあえるの…?」っと嬉しさに動揺しながら聞くと、「ああ、けれどちょっとだけな?とりあえず出すのはお母さんをちゃんと説得してからだな」っと言い、にこっとしてくれる。
ゆいは"やっとお兄ちゃんに会える"という喜びでいっぱいになってると、「ただ…、お母さんがあんだけ慎重になってるし、俺もゆいになにか起きないか心配だな…」っと、そんなゆいを見つめながら父は心配そうにボソリと言う。
「だいじょーぶ♪ゆーくんやさしいからゆいにもかぞくにもへんなことするわけないよー」っとゆいが床の扉を小さい手で必死に開けながら言うと、父は「そうだよな、行こうか」っと開いた地下に入り、階段を下りては頑丈な扉に近づいた。
ガチャリと鍵を開け、父は「ゆうー」っと小さな声で呼びながらゆいより先に入る。
その後に続くようにゆいは真っ暗な地下室にはいった。
するとお兄ちゃんは、地下の冷たい床で力尽きたように眠っていた。
「ゆうっ…大丈夫か?!」父は兄を抱き起こして思わず大きな声で呼びかける。
思わずゆいも「おにーちゃんしなないで!」っと大きな声で呼びかけてしまう。
すると兄はぴくりと体を動かしては、「なに…」っと小さく目を開けた。
「ゆいがオムライスもってきてくれたぞ、あと水とかまたいろいろな」っと父が言うと、「うん…」っと言いながら兄は頷いた。
「だいじょーぶなの?おにーちゃんしんじゃうの…?」っとゆいが言うと、「お母さんは死ぬほど放置はしないよ、ただ精神的に不安だとか空腹だとか気温とか、日光が当たらないから体が辛いんだろうな…」っと父は兄を見つめながら言った。
すると兄は体を縮こませては言う。
「どうして俺、閉じ込められてるの?俺…なにかしたの?」
っと瞳を赤く発光させては呟く。
そんな精神的に辛そうな兄を見て、ゆいはなんだか悲しくなる。
そして父はどう思ったのだろう。
「俺は絶対出してやるからな…」っと父はいうとひとまずお水を注いでは兄に差し出した。
兄は無言で、受け取ると、ゴクゴクと飲み始める。
するとちょっとだけ、復活したようで「ありがとうっ」っと言い、目の光が消えてはいつも通りの兄に戻っていった。
「また明日も来てくれる?」っと兄がいうと、「もちろんだよ」っと父は兄の頭を撫でた。
すると兄は「よかった…」っと安心したように言う。
「おにーちゃん、ぜったいだしてあげるからね♪」っとゆいは兄に小指を差し出した。
すると兄は「やくそくだよ」っと小指をつなげては、兄妹で指切りをし、兄を一先ず置いては一旦地下から出て、複雑な気持ちで父は、地下室に再び鍵をかけた。
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