■妹という存在
俺は自分のことを"普通じゃない"と感じていた。
そう感じていたのは、俺が外に産まれてすぐの事だった。
みんな自分を見ては驚いた顔をしている。
まだ何も知らない真っ白な状態の俺は、はじめはそれが普通なのだろうと思ったのだが、違った。
俺はすぐにみんなの真似をしようと歩き出し、どんな言葉があるのか、どんな時につかうのか、1度ですぐに覚えてしまった。
そんな自分を気味悪がり、母も父も誰も抱いてはくれなかった。
それに気付き、俺は全くしゃべらなくなった。
みんなに避けられるのが本当に嫌だった。
そんな日々が長く続いた。
ただ、唯一すぐ後に俺についてくるように生まれたゆいだけはすごく俺に懐いていてくれていた。
赤ちゃんの時はあまり一緒にはしてはもらえなかったが、歩けるようになり、しゃべるようになると俺にべったりで離れなかった。
それをきっかけに両親も俺をかわいがってくれるようになった。
はじめて俺は家族の一員になれた気がした。それが本当に嬉しかった。
けれども、再びみんなと違う自分を見つける度に、あの日が戻ってくるのではないかと、不安で仕方がなかった。
「おにいちゃん、けーきたべよう♪」
ゆいが俺にケーキを持ってくる。
7歳になった瞬間、何故か知らない人達に殺されそうになった俺は、まだ傷口が深く、あまり動くことが出来なかった。
それでも生きているのが不思議だった。
たまたま急所を外してたにしろ、出血が多かったため、"死ぬのではないか?"っと思うほどだった。
「うん、食べる♪」っと俺はゆいがもってきたケーキを笑顔で受け取る。すると母は「私とゆいちゃんの手作りだよー」っと言う、母は少し笑ってるようにも見えるが、誰から見ても作り笑いにしか見えなかった。
母は相変わらず、何かを隠している。
7歳になり、目が赤く光った時はなにかわかるのかと思ったが、その後あの件からは特に何もなく、結局わからないままになってしまった。
いろいろ気になることが多いが、とりあえずまず俺はこの瞳と、どう付き合っていけばいいのか必死に考えることになる。
今は怪我で学校は休んでいるが、もし学校で瞳が発光してしまえば、俺は更に学校にいられなくなってしまう。
俺はそんな悩みを抱きつつ、みんなでケーキを食べる。すると俺が食べていたケーキの中から緑色のアレが中から出てきて、俺は思わず「うわぁああ!!?」っと悲鳴を上げた。
するとゆいはくすくすと笑い「ひっかかったー!」っと笑っている。
「ゆい!!俺が抹茶ダメなの知ってるだろ?!」
っと俺はゆいに叫ぶと、どうやら感情が揺さぶられると瞳も変わってしまうようで、再び瞳が発光してしまう。
「ごめんー!」
それでもゆいは見慣れてしまったようで、軽く謝ると笑ったままケーキを食べ出す。
父は俺とゆいの絡みを見ながらニコニコと笑っている。
そして母は相変わらず笑顔とは言えないが驚くこともなく、普通に一緒にはいられるようになった。
そんな様子を見て俺は安心する。
もしかしたら、ゆいがいれば"再びあの日に戻る"事は無いのかもしれないと。
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