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闇夜の月
15


「はははっ!相変わらずユキナに怒られているなぁ。というより、今日もか。本当に我が妹ながら凄いなぁ」


石造りの白い柱の影から人が出てきた。


「お兄様…」


出てきたのはサリアの兄でカロリア国の王太子でもある銀色の髪をしたスキルトだった。


「まったく、ユキナもサリアのお陰でいつも大変だねぇ」


二人の近くにきたスキルトは、肘をつきながらけらけらと笑っている。


「…スキルト様もあまり変わりませんよ」


ユキナはスキルトを睨んだ。


「おっと、睨まれる様な事をした覚えはないんだけれども?」


心外だとでもいう感じだ。


「ご自分の心に聞いてみてくださいませ」


ユキナがさらりと言った。


「それにしても、こんな所で時間を無駄にしてもいいのかな?サリア」


スキルトがサリアを上から下まで見て言う。


「へ?…はっ、もしかして、お兄様知ってたの!?」


しかし、その答えは聞く事ができなかった。


「申し訳ありませんスキルト様、サリア様の準備がありますのでこれで失礼します」


サリアがまって、と言ったのも聞かないで、ユキナは時間がありませんからとせかして、その場から離れた。

一人その場に残されたスキルトは、笑顔でいってらっしゃいと手をひらひらと振っていた。


絶対知ってたでしょ―、お兄様―!!


そのサリアの心の叫びは誰にも聞かれることはかなった。


そしてサリア達が去った後、スキルトが呟いた言葉も誰にも聞かれることはなかった。






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