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闇夜の月
11

………………

「ディシェル・アラルト、ねぇ…」

誰だろう…まったく名前も知らない人だ。

そうポツっと呟いた後、馬を走らせた。

「もう少し行ってから帰ろう」


………………


馬を走らせていると、前の方から何か黒いかたまりが見えた。
しかし、ここからじゃ人だか何だかもわからない。

こっちに向かってくるものが何かと確認できると、どうやら人のようだった。

…めずらしい。

ここを誰かが通るなんてめったにない。
もしかしたら、他の時間帯なら誰か人が通っているのかもしれないが、この時間帯は人が通っているのをまだ見たことがなかった。
それに、わざわざ人が通らないような道を選んでいたので、ここを使う人がいるなんてと驚いた。

──…ま、一応フード被ってるし下を向いていれば私だってわからないよね…。

一人で走っているとはいえ、こんなコトを知っている人は王宮の人々といつも通って出てきている裏門の門番の騎士だけだ。
なので、顔をそのままさらしているとわらわらと人々が集まってくる可能性があるから、朝出てくるときにはフードを被っている。


相手と顔をあわさないように俯いた。

すれ違うとき、相手の黒い馬についている紋章に目がいった。

今まで見たことのない紋章だった。






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あきゅろす。
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