9.髪を梳いてキス(土銀)
くるくるくる
無造作にあちこちを向いている銀髪の髪の毛。輝く光りの輪よりも、細かく出来ている光と影の陰影を指先でばらして遊ぶ。
聡明感のある額の方から指を差し込むと、見た目よりもさらさらふわふわとした感触が気持ちいい。途中でひっかかることもなく毛先まですんなりと少し伸びてきた髪を梳くことが出来た。
手触りの良さに二度三度と繰り返しても当の本人は少しも起きる気配がない。
「少しばかりキツかったか」
初めての行為だから加減してくれとの相手の要望は、結局途中でやむなく変更する形になった。
思いの外、その時の声や仕草、みだれて汗で首筋に張り付いた髪の一筋にさえ反応してしまった。今までの自分は何だったのかというほどに貪欲にその体中に食らいつき、結果相手にかなり負担を強いてしまった。
「まずいな」
『自制』というのを常日頃隊士に諭し、自身にも言い聞かせ見本であれと思っているのに、この男を前にしたら自制とはなにかさえ忘れてしまいそうになる。
しかも、そんな自分を嫌どころかむしろ楽しく思っているのがまた厄介なところだ。
「ったく」
口もとには自然と笑みが浮かぶ。
再び髪に指を差し入れ、朝日に輝くそのキラキラとした髪を梳く。
「ん……」
小さくあがった声をあやすように優しく口づけた。上唇をはさみ、次に下唇。仕上げに軽いキスを。
目覚めた時にはきっと暴言を吐きそうだと思いながら。
それすらも楽しみな自分はもう恋の虜。
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