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18.キスマーク(万高・大学生)

せっかく暗くしてもらったのに。
カーテンから零れてくる満月の月明かりは思ったよりも明るくて。

日に焼けない白い肢体を濃紺のシーツに浮き上がらせる。


「なんだコレは」


上から見下ろす彼の瞳が鋭くて思わずぞくりとする。


「はっ‥なん‥‥っっ!」


強く押された上腕部を見ると、そこにあったのは赤い跡。一つではなく薄いものから濃いものまでいくつも付けられている。


「少し相手をしないうちにこれとは見上げたものだな」

「あ‥‥」


言えない。

まさかキスマークをつける練習をしていただなんて。
前に万斉に付けられたのが嬉しくて自分でも万斉に付けたくて練習してだなんて、言えるわけがない。

だって万斉は。


「高杉晋助。流石、噂通りというわけでござるか」


噂、か。
万斉は俺が誰彼構わず手を出している男だと信じている。
だからこそ。
興味を持って近寄ってきた彼にそのフリをしているなんてことがばれてはダメ。
俺が、肌を合わせるのは初めてだったとか絶対いえない。
今日のこれが二回目だなんて言える訳がない。


「お前が相手しねぇってんなら俺ぁいくらでもいるんでな」


虚勢を張って、おまけに不敵な笑みまでつけてやる。


「拙者相手にそんなことをいう女‥‥いや、女だろうが男だろうが初めて。いいだろう。拙者でなくてはだめになるまでその身を溺れさせてやる」


そう言い切る彼、河上万斉こそ大学では有名人で。
女に困らない筈なのになんの弾みでか自分に興味を持ってくれたのが夢のようだった。

だって先に好きになったのは自分のほう。

ギラギラとして、獲物に食らいつく獰猛な黒い獣のような万斉。


愛しい獣を手に入れるために。



「おもしれぇ。やってみろよ」



嘘を重ねる俺。






眩しさに窓に目をやると、嘲笑うかのように一層輝く月が俺達を見下ろしていた。



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