17.さよならのキス(坂高・攘夷) 月夜の綺麗な晩のこと 静かに襖が開けられる その気配に殺気など微塵も感じられず かといって起き上がることを望んでいる風でもなく 思わず寝ているふりをしていると 唇が塞がれた すぐにそれは離れ、髪を一撫でして 来たときと同じように去っていく 「行くか、辰馬」 宇宙にいくと言い出した 阿呆は今夜発つのだろう 別れの挨拶のつもりか だったらあんなキスしなければいいのに 「くそっ」 温かいものが頬を伝う 大切なものを扱うように 彼にしては似つかわしくない 優しい優しい 別れのキスだった [*前へ][次へ#] [戻る] |