まさかのまさか
「あ?銀時、なんでテメェがいんだよ」
何一つ変わらない表情で、仕草で。不思議そうな顔をしてこちらを見ている高杉が立っている。
俺は口をあんぐりと開けて、多分馬鹿ヅラして見てた。
「おい。なんとか言えよバカ」
相変わらずの口の悪さすらもいつも通りで。
「な!なんでてお前がなんでだろうが!!なにコレ。なんのドッキリ?あれここってスタンド温泉じゃないよね??それとも死んだフリして実は生きてましたーとかいうやつ??頼むから俺にしか見えません的な展開だけはやめてくれ!!!あのっ、ほんとすんませんしたっ。あんなこともこんなことも全部今謝っから!だから祟んのだけは勘弁してくれッ!」
なんだかわかんねぇけどとりあえず謝っといたほうがいい気がして目の前にいる高杉に深々と頭を下げた。
「た、たかす‥ぎ?」
ヅラの驚く声がした。
向こうから見たら俺が頭を下げたから俺で隠れていた高杉が見えたらしい。
ん?
てことは俺じゃなくとも見えんのか?
オイオイ。
いよいよどうなってんだこりゃ。
俺が頭に?をいっぱい並べている間に、桂は高杉の傍までいき、触ったりつねったりいろいろしている。
「やめ、ヅラまでいんのかよ‥‥つーか、てめぇ何してん‥オイ!どこさわってやがんだ!!なんだってんだいったい‥‥万斉ッ!」
高杉の呼び声に、ああもう一人いたんだっけと後ろをくるりと見ると、濃いサングラスで目はよく見えねぇが人形のように動きが固まっている男がいた。
こっちはさしずめ驚きすぎて何も出来ないってやつか。
他の奴らにも見えてるらしい事実が逆に俺に平静さを取り戻させてくれた。
「ほら、えーと、河上だっけ?お前のこと呼んでんぞ」
声をかけてやると河上はかけだして高杉をヅラの手から奪い、抱きしめた。
その腕が震えていたのは見なかったことにしといてやらぁ。
落ち着いたところで高杉の話を聞いた。
なんでここにいるのかも何をしてたかも何もわからないという。
誰も、高杉が死んだことは一言も発しなかった。
まるで言葉にしたら全てが消えて失くなる気がしてならなかった。
そう。
高杉晋助は死んだ。
一年前に。
俺が殺したのではなく、ましてや幕府に殺されたわけでも捕らえられた訳でもない。
高杉の命を奪ったのは現在の医療では治すことの出来ない病だった。
最期は静かに息を引き取ったと聞いている。
以来、鬼兵隊は解散こそしていないものの活動停止状態。ここにいる資金源の兄ちゃんが魂抜けたみたいになにも動かなくなったもんで停止せざるを得ないってとこか。
しかし、その高杉が。
今、目の前にいる。
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