穏やかなるその瞳
「迷うなんてお前さんらしくねぇじゃねぇか。何を迷うっていうんだ。なあ万斉‥‥‥迷うな、進め。テメェで選んでテメェで切り開け。後ろなんて向いてたら斬り殺されちまうぜ‥‥‥俺ぁ、ずっとそうしてきたさ。そうしてきて、万斉にも会って、満足だったさ。後悔なんてしちゃいねぇ」
「晋助‥‥」
「さ、早いとこ酒とって来いよ。酔いが醒めちまう」
「‥‥‥そうで、ござるな」
目元を拭って河上が立ち上がり、「晋助を頼む」と一言置いて来た道を戻る。
「河上ー!多分それじゃ足りないから新しいのも買ってきてな!!」
そう叫ぶと、ヅラも便乗してきた。
「ついでにつまみにんまい棒もよろしく!」
「主らの為に用意するのではござらん!!」
と眉間に皺を寄せて返してきたが、
「万斉、頼んだぞ」
と高杉が一言いえば
「承知した」
と、走っていった。
ほんと、高杉んこと好きねアイツ。
「なあ、お前ってほんとはなんなわけ」
何となくいえなかったことを聞いてみた。
さっきの河上との話じゃ自分の状況もわかってるみたいだったから。
「さあな。俺にもわかんねぇ。気が付いたらいたのは本当だしな」
「お前、いつからわかったのだ」
確かに。
最初はタイムスリップでもしてきたのかと思ったけどどうやら違うらしいし。‥‥‥自分が死んだこともわかってるような口ぶりだった。
「‥‥はっきりしねぇけどな。ココにきて桜見てたら、ああそうだったってぇ感じだ」
「やっぱり消えんのか」
そう聞くと、
「そうさな、多分」
と言って懐から煙管を出して一服やりはじめた。
しみったれた雰囲気は好きじゃねぇ。
なのにあんまりにも憑き物が落ちたみてぇに穏やかな高杉に、やっぱりこれは夢かもしれないなんて頭を悩ませていると、後ろから頭をゲシッと蹴られた。
「イッテエエェェエ!!高杉ッ、なにしやがんだテメェ!」
「クク、呆けてやがるからだろうがよ」
楽しそうに意地の悪い笑みを浮かべながら見下ろされた。
「んだとぉ!」
頭を押さえながらコノヤロー!と反撃しようとしたら、目の前が真っ白になった。
「ぶッッ!!‥‥‥んだあ?」
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