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ジャッ、と。
乱暴にカーテンが開いたと思ったのは気のせいではないはず。
「あのねぇ、お前らが人目もはばからずいちゃついてっからこちとら出るタイミング無くしたんだろうが。俺じゃなかったら学校中の噂の的だよ?」
んなこといわれなくてもわかってまさァ。
それに、アンタがいるのは保健医から聞いて最初から知ってたってんでィ。
こっちに来てカーテンから顔を出した坂田‥‥‥土方さんの担任、坂田銀八は不機嫌丸出しでそう言った。
「ああ、すいませんね。好きな奴相手だとまわり目に入んなくて」
「はっ、教師目の前にしてよくいうな‥‥お前確か、えっと一年の‥‥」
「沖田でさァ、先生」
「あれだよ?男同士なんて不毛だよ?子孫繁栄出来ないんだよ、分かってる?」
テメェにゃ言われたくないですねィ。
「説教はそのくらいにして早く行かねぇと授業始まりますぜィ」
「おわッ、そうだった。ったくお前らのせいだっつうの」
ワタワタと慌てている。
一旦目の前から姿が消えたが、一応授業の準備一揃えは持ってきてたのか、腕にいろいろ抱えてまた顔を出した。
「何でィ。まだあるんすかー?」
「君さあ、沖田くんだっけ?土方はキレイなコだから遊びだったら止めといてくれる?」
−−−いつも死んだ魚の目のような瞳でボーッとのらりくらりとしている坂田が、ギラギラした強い光を宿した瞳で鋭く俺を睨んでいた。
背中に冷たい汗が流れる感触がしたが、気のせいと自分に言い聞かせる。
「大丈夫すよ。土方さんのことはアンタよりずっと分かってますんで。それに俺は誰より本気でさァ」
「‥‥‥そ。ならいいけど。いやあ沖田くんなんか黒いオーラあっからね。俺一応担任だし、純粋な奴が傷つくのはね‥‥‥でも悪ィ。余計なことだったみてぇな」
「本当、余計なことですねィ。俺だってまだ土方さんより若いピチピチの高校一年すよ。んな黒いオーラなんていわれちゃあ傷付きますね。それにサボってばかりのアンタに言われたくありません」
「いや、サボりじゃねーから。純粋に風邪気味なだけだから変なこと言わないようにね。まあ、どうせ俺は薄汚れた大人だよ。口煩い先生だよ。悪かったですねー棚上げして黒いなんて言っちゃって。んじゃ、もうすぐ先生帰ってきて見てくれっと思うから大人しくしとけよ」
いつものぼんやりとした姿に戻った坂田は、頭をぽりぽりと掻きながら保健室を出ていった。
アンタ自分でわかってますかィ?
土方さんを見てる時、優しい目をしてるってこと。
土方さんがアンタを見つけた時、キラキラした顔をしてるってことも。
いや、二人共わからないまんまでいいんですよ。
気付かないまんまでいて下せェ。
でも。
もしも。
もしも気付いたとしても。
土方さんは渡しませんよ。
積み上げたものが崩れそうになっても、俺は離しませんよ。
誰にも渡すもんか。
20090107
→あとがき
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