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「ハァ?ちょ、おま、いきなりこんなとこでなに言い出してんだよッ」


慌てたように身体を離そうとする腕を取り逃がさない。
顔はすでに真っ赤で、焦っているのか目がキョロキョロしている。


「あー、イタタタ‥‥頭がズキズキしまさァ。こりゃあボールの当たり所がかなり悪かったかなあ。でも多分、土方さんがキスしてくれんなら一瞬にして治りそ‥ぶッッ」

「それ以上いうな。お前な、隣のベッドにも誰かいんだろうが。聞こえたらどうすんだよッ」


俺の口を手で塞ぎ、近距離でヒソヒソと囁く。
確かに保健室にある三つのベッドの内、俺のいるベッドと反対側、一つ間をとった端のベッドはカーテンで覆われていた。


「ああ、あれ。大丈夫ですよ。俺が来る前からカーテン閉まったままだし、さっきまででかいイビキが聞こえてましたからねィ。あちらさん熟睡みたいでさァ。んでなきゃいくら俺でもこんなこと言いません」


やんわりと塞がれていた手を外し、気にしている土方に合わせ、小さめの声で話をする。


「そ、そうか‥‥」


明らかにホッとしたような様子が気に障る。

俺は別にいいんですぜ?
誰に何を知られようと、何を言われようと。
現に今も‥‥‥いや、でもアンタが人に知られることが嫌で俺から離れていくっていうのならどれだけども隠す努力はしますよ。
例外はありますがねィ。


「だから早く。何、カーテンで何も見えやしませんよ」

「‥‥‥どうしたってんだ一体」


困った顔をしている。
それはそうだろう。
校内でこんなことを要求したことはない。ただの先輩後輩を演じていた。
世間体を気にするアンタに合わせて。
だけどそんなのも取り払わないといけねぇ時だってあるってんだ。

目を閉じ斜め上を向いて待っている俺の唇に、ようやく温かい感触が軽く押し付けられすぐに離れていった。


「それだけですかい」


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