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そう言うと押し入れをゴソゴソやりはじめる。
「‥‥‥火鉢あんならさっさと使えばいいじゃねぇか」
「んー‥‥、なんかなあ今いち気が進まねぇっつうかなあ‥‥あ、あったあった。まだ使えそうだな。いまつけっからな、寒がり土方くん」
ゴトゴトと奥から火鉢を引っ張り出す。
寒がりとかなんとかいわれたことより、言い淀みながらごまかすように言葉を繋ぐ銀のほうが気になった。
「なんで気が進まないんだよ」
「うん?まあね、こうゆう古臭いモンってさあ、なんつぅか、いろいろ思い出すじゃん?ほら、昔あったこととかさぁ。だからあんまり‥‥ね」
昔ってなんだよ。
気にはなるが聞けやしない。
なあ銀、昔っていつのことだよ。
お前が昔、一緒に戦ってた奴らとのことか?
それとも――――。
『お前さん幕府の狗じゃねぇか。銀時に近付くんじゃねぇよ。お前じゃ銀時は受け止めきれねぇぜ』
いつだったか万事屋に来た帰り道、鋭い切っ先と共に暗闇からかかった言葉。
振り向くと隻眼の派手な着物を着た男‥‥‥高杉晋助が立っていた。高杉の口からは銀時とそうゆう関係であったことも告げられたが、銀時には高杉と会ったことなど話さなかった。
なんでかって。
ただ、銀時の頭に高杉のことを思い出して欲しくなかったから。それだけの単純な嫉妬心
でも。
ガサガサと火鉢の準備をしながら目を合わせない銀時を見ていると不安になる。嫌なモヤモヤが胸のうちにたまる。
なあ銀時、お前は今、もしかして高杉のことでも思い出してんじゃねぇのか。
そう思うと俺の頭ん中まで想像の二人が出てきてしまう。火鉢に二人であったまってたのか、それとも‥‥‥‥
はっ馬鹿馬鹿しい。
頭を振るが、一向に俺を見ない銀時にイライラは収まらない。
「おい銀。火鉢はもういい。いらねぇ」
「はあ?なにいっちゃってんの?寒がり姫様のためにこうやって準備してんのにさあ、それってなんかのプレイ?俺虐めて楽しい?まさかさらにこのまま帰るって言わないよね」
案の定、キレ気味で早口でまくし立てる銀時。
それでいい。
お前は、俺だけ見ときゃあいいんだよ。
まだぶつぶつ言いそうな口を唇で塞ぐ。
驚いた顔をしていたが、舌先を中に入れたら銀時のも絡まってきて。寒い中で重ねている唇がやけに熱く感じた。
「十四郎、どうした」
唇を離すと、優しい声でそう聞いてくる。
やっと呼んだな、俺の名前。
「火鉢なんかより、お前のココで俺をあっためてくれりゃあいいだろうが。出来ないなんて‥‥言わねぇよな?」
ツツ‥と膨らみかけているソコをなぞると、ピクリと動くのがわかる。
途端、手をガシリと掴まれる。
「全く。いつからそんな悪いコになっちゃったんだろうねぇ。銀さん限定にしとけよ?」
真近で、欲に濡れた瞳でそんなことを言われたら俺だって鼓動が跳ね上がるわけで。
「たりめぇだろ、他の誰に言うっつうんだよこの馬鹿天パ」
思わず憎まれ口を叩いてしまう。
「その言葉ちゃんと胸に刻んどくんだよ」
「わかったから早くあっためろ」
「‥‥‥煽ったのは十四郎だからね。溶けそうになるまで熱くしてやるよ」
ニヤリと艶然と微笑んだ銀時は俺の手を引いて寝室への襖を開けた。
火鉢は冷たい部屋に取り残されたまんま。
それでいい。
銀時。
俺だけを見ろ。
後ろは振り向かずに。
俺だけを。
お前の視線の先には、俺だけで、イイ。
終
20091223
→あとがき
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