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「ちょっとさあ、アンタなんでまたこんなとこにいるわけ」


潜入先の居酒屋で仕事をしていると、ここ三年で何度も遭遇した顔を見かけた。


「ああ、偶然でござるよ、偶然」


サングラスをした男は新聞から顔を上げにこやかに微笑んだ。


「偶然って‥‥とりあえず、追加の熱燗っ!!」


持って行った徳利をバンッと置き、しまったと思った。目立たないようにしていたのに、他の人達に変に思われちゃあいけない。

「偶然にしてもありすぎるだろ」

「いやいや、本当に偶然でござるよ」

‥‥‥解せない。
今日でこの居酒屋に潜入して約一ヶ月。最近不穏な動きをしている攘夷浪士達がよくここに集まるという話しを聞き、ずっと待っていた。ようやく過激攘夷浪士一派のしっぽを掴み、裏で力を貸している奴がわかろうって時に限って、ややこしい奴が目の前にいる。

コイツは、人斬り河上万斉。鬼兵隊の一員であり、俺は一度殺されそうになったことがある。
‥‥‥が、とどめは刺さずに見逃してくれた。それからどうも事あるごとに遭遇することが増えた。最初は構えていたが、何をするわけでもなくたわいもない世間話をしてくる。まるで普通の知人のように。そして挙げ句の果てには真選組の自分に対して、鬼兵隊に入れなどと言ってくる。
そんな状態がもう三年も続けばいい加減慣れて来るというものだ。


「ああ、もうすぐ連れが来るのでお猪口をもう一つ貰えるかな」


呑気な口調でそんなことをいってくる。


「‥‥少々お待ち下さい」


連れ?
河上が誰かと連れ立っているところなどみたことがない。
‥‥‥まさか。まさかな。
厨房にぐい飲みをもう一つ取りに行き部屋の入口に戻ると、草履が一つ増えていた。居酒屋とはいえココは小洒落た個室が多いのがウリだ。だから攘夷浪士も集い易いのだろうが、‥‥‥まさか指名手配犯がおおっぴらにこんなところには来るわけないだろう。気を取り直し、仕切の襖に手をかけながら自分の考えが当たりませんように、と願う。


「失礼します‥‥‥って、えええええッッ!」


まさか、が来てるぅぅぅ!


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あきゅろす。
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