甘いくちづけを君に 6
鼻唄を歌いながら、楽しそうに甘い物体をあちこちに塗りたくっている男がいる。
「‥‥‥これは一体何のまねだ」
俺は足の拘束は解かれたものの、手は後ろで縛られたまま。帯を取られ前は完全に丸見えで、着物が中途半端にに肩に引っ掛かっているという恰好。
おまけにあちらこちらに生クリームが塗りたくられている。
「ん?デコってんの〜。今なんでもかんでもデコんの流行ってんだろ?」
「なんだかベトベトで気持ちが悪いぞ」
「大丈夫。あとできれいに全部食べてやるから」
その言葉に体がカッと熱くなってしまう。それはあんなことやこんなことさせるってことだろうか。
「うわっっ」
不意にズルっと下着をおろされ、銀時の目に曝されたそれは、元気な姿をしていた。
「あーらら。小太郎ってば何想像しちゃったわけぇ?なんかさわってもいないのにビンビンなんですけどぉ」
「っっ、銀時が悪い‥ 」
手を縛られた状態では隠すことも叶わず、ドキドキすればするほど、ソレは脈打つだけだった。そこにもたっぷりとクリームを塗られる。
「ふーん。よっしゃ、こんなもんかな‥‥‥では御主人様。今日はこの銀時めがご奉仕させていただきますれば、なんなりと申し付け下さい」
「手を外してくれ」
「却下」
「何故だっ何でもといったではないか!」
「それは『ご奉仕』には入りませんので」
ニッコリ笑って断られる。
「さあ、御主人様」
銀時の指がほほを撫でる。
「どうして欲しい?」
「‥‥‥この、ベタベタするクリーム、なんとかしろっ」
「仰せのままに」
「ん、や、やだ。もう、そこ、クリームついてないっ」
生クリームなどもうとっくになくなっているのに、銀時は執拗に胸の突起を吸ってくる。
「ん〜そぉ?なんかこっから甘いもん出てくる気がするからさあ」
「もういいっ!そんなのお前の気のせいだ」
刺激されればされるほど、もっとさわって欲しいところが疼いてしまう。
「そこは、もういいから、もっと下を」
「ん?下って?もしかしてこれのこと?」
「んあっ」
「なあ。ちょっと見てみろよ。お前の熱で生クリーム、溶けてどろどろ」
確かに。
異様な光景だ。ほわほわと塗りたくられていたものが型崩れ、いやらしくヌラヌラと光っている。
そして、なにより、椅子に座らせられ、足と足の間に割り込むようにひざまづいている銀時の顔が、唇、エロさを増して目が離せなくなる。
「ほいじゃま、いただきます」
「んああああっっ」
いきなり全てが口の中に飲み込まれ、熱い口内に身震いがする。
緩急をつけて刺激され、あっという間に達してしまう。
「早いんじゃね?なに、お前こーゆーの好きなの?」
濡れた口元を手で拭いながら、銀時が上目使いに意地悪く聞いてくる。
「ふっ‥お、前が好きなんだろ」
「またまたぁ。結構それでめざめちゃったりしてね。あ、こっから先は邪魔だからとるな」
ようやく腕を外して貰ったが、痺れているしイッたばかりでだるい俺はお姫様抱っこで布団まで運ばれることとなる。
その途中目に入った大きな箱と生クリーム元凶の大きなケーキ。
「銀時、あれは?」
「ん?あれ?ああ、お前んとこの奴らがさあ、自分達じゃいつ手入れが入ってバタバタになるかわかんねぇしゆっくり出来ないから、俺が代わりに祝ってやってくれって持って来たんだよ」
「あやつら、そんな余計な気を回さずともいいものを‥‥‥」
思わず目頭が熱くなる。
ん?
なんか。
「ということは、あれは俺の為のケーキだろう?‥‥‥ろうそくもつけてないのに、もう半分は無くなってるぞ。銀時ぃぃ?」
「あれ?あ、いや、その、ね。ちょっと一口味見を〜と思ったらなんだか止まらなくてなっ。いやあ、なんだね。やっぱ有名店のケーキは違うわ。まずクリームからして全然違う!ほんとずっと舐めてたくなるくらい‥」
ペシッと力がまだこもらない手で軽く頭をはたいてやる。
「俺のケーキが‥‥‥まだろうそくも吹き消してないのに‥‥‥」
ぐすん、と鼻を鳴らす。
「だぁーっ!泣くなよ!そのぶん坂田銀時、本日はなんでもごご奉仕させて頂きますから!!な?」
「なんでも?」
「あ、‥‥ああ」
若干しまったという顔をしながらも焦ってる銀時がかわいく見える。
カッコイイ銀時もいいがたまにはこんなのも、いい。
「では、とりあえず」
「はは‥‥早速かよ。どーぞ、なんでも言ってください」
「キス、して」
一瞬、キョトン、とした顔をして、紅い目の恋人は優しく笑った。
「仰せのままに、姫」
貰ったキスはとても甘い甘い、とけてしまいたくなるような、甘いキスだった。
たまには、こんな誕生日も、いい。
終
20090626
→あとがき
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