そんな二人がとても好もしく見え自分まで嬉しくなって、俺は祐一の手を握った。 「良かったな、祐一」 「はい」 「代筆屋と仲良くな」 「はい」 「ええっと、それから……」 「晴」 祐一との別れを惜しむ俺を、背後から大志が呼んだ。 「急かすようですまないが、そろそろ出発しよう。夕刻までに次の町に入って、宿を決めたい」 「うん、分かった」 俺は握っていた祐一の手を離し、改めて二人に別れを告げた。 「じゃあ祐一、代筆屋。達者でな」 「晴さんも、道中お気をつけて」 「無理すんじゃねえぞ。足が痛くなったら、回収屋におぶってもらうんだぞ」 「大丈夫。行ってきます!」 くるりと向きを変え数歩先で待っている大志に並ぶと、行く先に遠く広がる空の青さが目に飛び込んでくる。 「うわ」 雲ひとつ浮いていない青の眩しさに、俺は目を瞬かせた。 どこまでも青い中空を、一羽の鳥が飛んでいく。 南に向かって飛んでいくそれは、行ってしまった仲間に追いつこうと先を急ぐ、今年最後の渡り鳥か。 力強く羽ばたく翼が陽の光を受けて、銀色にチカリと輝いた。 「鵬(ほう)の背、其の幾千里なるかを知らず。怒して飛べば、其の翼は垂天の雲の如し。晴、町を出るのはこれが初めてだろう。行きたいところがあれば言ってくれ。何処へなりとも供をする」 「うん」 俺は大志に大きく頷き、鳥が飛んでいった方角へ旅の一歩を踏み出した。 了 『荘子』内篇・逍遥遊篇 金谷治訳より 一部抜粋、引用いたしました 参考にさせていただいたサイト様 ほむま弓道論[初級編] 中国の神話・民話 幻想世界神話辞典 ページ一覧へ |