[携帯モード] [URL送信]

封魔師 ―垂天の翼―
其の二十

 大志の言うとおり、俺は今まで人のために魔物を封じてきたわけじゃない。
 でも祐一と代筆屋が魔物の犠牲になるのだとしたら、話は別だ。
 幸いなことに、俺には二人を守ってやれる力が備わっているじゃないか。
 そう気がつくと居ても立ってもいられず、俺は大志に向き直りはっきりと彼に告げた。
「大志、俺――」


***


「晴さん、本当に行ってしまうんですか」
 翌朝。
 俺と大志は孤児院の門に立っていた。
 大志は昨日と同じ黒の作務衣姿。
 俺は紫色の短い袴をはき、頭には笠を被っている。
 この旅装束は今朝早くに代筆屋がどこかへふらりと出かけていって、急遽誂えてくれたものだった。
「僕が…… 僕が、魔物なんて呼び寄せてしまったから」
 目が覚めて大体の事情を聞かされた祐一が、目に涙を浮かべながら言う。
「違うよ、祐一。言っただろ、戻ってくるって。大志は前任の守り人から俺を助けるために、大人になったらこの町から連れ出す約束をしてくれていたんだ。でも今の守り人は祐一だから、その必要はないだろ? 大志が火烏を放してやるのについていって魔物のことを色々教わったら、すぐに帰ってくるよ。俺はこの町で、封魔師として生きていきたい。大志も一緒に暮らしてくれるっていうし」
 そうだよね?
 隣の大志を見上げると、彼は俺に頷き返した。
「回収屋さんにもご迷惑をおかけして、本当にすみませんでした」
 祐一は改めて大志に深々と頭を下げる。
「いや。この町に住むようになれば、世話になることもあるだろう。帰ってきたら、宜しく頼む」
「はい」
 大志の好意的な返事に祐一は顔を上げ、笑顔を見せた。
「しかしよお。晴に筒井筒のいい人がいたなんて、驚いたぜ。今までこいつに義理立てして独り身でいたのかい。そうと知ってりゃ、俺だって」
 祐一が元気になりひとしきり喜んだ代筆屋はもう元の彼に戻っていて、いつものように横から軽口を挟んだ。
「筒井筒って…… 俺と大志はそういうんじゃ」
 俺は慌てて否定する。うっすら赤くなった頬は、被った笠が上手く隠してくれた。





ページ一覧へ




[*前へ][次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!