恋、願わくは 2

 
「晴! 俺が連れてきたお客様、何番テーブル?」
 出迎えに現れたレストランのホール係にお姉さんを引き渡すと、俺はもと来た道を引き返し、裏の従業員出入口から中に入る。
 ここは、俺のバイト先のレストランだ。
 高校生になってすぐに働き始めて、今年で六年目。
 更衣室でレストランの制服に素早く着替え、リボンタイは首に引っかけたまま、慌ててバックヤード通路に出る。
 丁度出た所で、更衣室とは通路を挟んだ反対側にある厨房に入っていこうとしている、バイト仲間の晴をみつけて声をかけた。俺は晴に、お姉さんの案内を頼んだんだ。
「五番だよ。庭が見える席がいいって言われたから。あの人、お前の知り合い? リョウがここに女の人連れてくるなんて、珍しいよな」
「知り合いじゃないよ。さっき来る途中でナンパされた」
「えっ、ナンパ!?」
 ナーイス、晴。
 晴は何でも大袈裟に驚いてくれる。
 彼との付き合いが長い俺にはそれが分かっていて、わざと嘘を言ったんだ。
 狙い通り、デシャップ台に並べられた、出来上がったばかりの料理の皿をチェックしていたコック長が、チラッと俺達を見た。
「ナンパなんて…… 知らない人についていったら駄目なんだぞ。リョウ、分かってるよね?」
 綺麗で派手な見かけとは違って、恋愛事情に奥手な晴は、湯気の立つ皿を丁寧な手つきでトレーに乗せると、俺に言い聞かせるような口調になる。
「はいはーい、分かってるって。晴、考えてみてよ。俺が誰かについていったことなんて、今まで無いでショ?」
 制服のリボンタイを何度も結び直しながら軽く受け流すと、晴は「どうだか」と一言残してトレーを抱え直し、ホールに戻っていった。




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あきゅろす。
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