My sweet baby 18

 恋人の耳に噂が入った時には、既に被害者の男性教師を捜そうとする生徒まで現れていた。
 そうと知った恋人は、教え子達の理不尽な仕打ちに慄き震えた。
 噂の内容が間違っていると否定して回ることは、自ら挙手することとイコールだ。
 それからというもの恋人は廊下で生徒達とすれ違う度、彼らの笑顔の裏側に、先生、高校生とやったんだってね。何もかも知ってるよ、という嘲笑が隠されている気がして、生きた心地がしなかった。
 こうなってしまっては、義光との関係がいつ白日の下に曝されるかしれない恐怖に、平然と耐えていられるわけもない。
「お前との交際が公になれば、僕は未成年と淫行した性犯罪者になってしまう」
「だから昨夜、俺と寝るのを嫌がったのか」
「僕はレイプなんてされていない。お前とも真面目に交際しているつもりだ。なのに何故、こんな……」
 頭を抱えて辛そうに項垂れた恋人を、義光は優しく抱き寄せる。
「俺は言い付け通り、学校では先生に話しかけないし、付き合ってることは誰にも言ってない。噂なんて皆が飽きてくれば、そのうち消えて無くなるもんだ。気にしないで普段通りにしていれば、誰にもバレないって」
 強い意志を持って人々の輪の中心にあろうとする者と、何の覚悟もないまま突然中心に引き摺り出された者の意識の差は、想像以上に大きい。
 義光は恋人を抱きしめ慰めながらも、どうしてそこまで彼が他人の口を気にするのか、理解できていなかった。
 だから義光は、その場の思いつきを言ってみただけだったのだ。年上の恋人に、自分が頼りになることを示したい一心で。
「先生がそんなに気にするなら、俺、高校辞めたっていいし」
「小笠原、今なんて……?」
「俺が学校からいなくなりゃ、レイプなんて馬鹿げた噂もすぐに消えるだろ」
 抱きしめられていた恋人は、義光の胸を慌てて押し離すと、蒼白になって叫んだ。
「何を言っている! 高校を中退するだなんて、絶対に駄目だ!」
「別に大したことじゃない。俺、自分が学校で浮きまくってるの自覚してるし、正直居心地は悪いもん」
「お前の成績は、トップクラスだと聞いているが」
「あーまあ、T高の中ではね。だけど大学に行きたいわけじゃないし、企業に就職するつもりもない。バンドマンに学歴は必要ないしな」




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