My sweet baby 14

 義光は低く唸り、顎を持ち上げるのはやめにして、教師の鼻の上に乗っている眼鏡のブリッジを指先でつまんだ。
「あっ、こら。か、返せ」
 顔から器用に銀縁眼鏡を引き抜くと、強度の近視のため裸眼でいることに慣れていない教師は眼鏡を取り返そうと、焦って義光を見上げる。
 そこを狙って義光は、無防備に向けられた教師の唇を自分の唇で塞いだ。
「うむっ……!」
 咄嗟に唇を固く閉ざした、キスの受け方すら知らない教師に配慮して、義光はいきなり口の中に舌を入れるような真似はしなかった。
 フリーザーから取り出したばかりの硬く凍ったアイスキャンディーの先端を食む要領で、教師の唇を軽くくわえる。
「ん、んん、んっ」
 上下の唇の間に教師の唇を挟み込み、吸い上げてからぱっと離し、再度挟んで吸い上げてはまた離すと、義光の唾液で濡れたお互いの唇が重なる度に、チュッチュッと淫らな音がたった。
「ふっ、はあっ」
 義光が漸く顔を離した頃には、身体の硬直も解れ、濡れそぼって光る唇を紅く膨らました教師が、ぐったりと義光の胸にもたれかかってくる。
 すっかり溶けて柔らかくなった教師の身体を受け止めながら、義光は低い声で囁いた。
「な、センセ。風邪はもう治ったんだろ? アンタをもっと可愛がってやりたいんだけど、寝室どこ?」
「し、寝室……?」
 抱えられた腕の中で、足りなくなった酸素を脳に取り込もうと懸命に深呼吸をしていた教師は、ぼうっとした頭のまま何も理解できずに、義光の言葉を繰り返す。
「そう。俺的にはここで立ったまま、ってのもアリだけど、先生初めてだろ? 今日は優しくしてやりたい」
「はじ…… え?」
 初めてという言葉にひとつの行為を連想し、義光が言わんとする意味をやっと理解した教師は動揺を隠せない。
「いや、でも、それは」
「先生と生徒だから駄目だ、ってのはナシね。そんな理由で引き下がるほど、俺はお人好しじゃない。それにここまできたらもう我慢できないだろ。俺も、アンタも」
「う……」
 頬を赤らめた教師は俯いてしまう。
 そうして暫くの間無言が続き、痺れを切らした義光が口を開きかけた時、教師の左腕が上がった。
 顔を義光の胸に擦りつけたまま、自分達が抱き合っている壁伝いに数十センチすぐ横の、閉まっているドアを指さす。
 微かに震える指が示す先を確認した義光は、今度こそ教師の顎に手をかけて顔を上向かせた。
「好きだよ、先生」
「小笠原……」
 もう一度口を塞いだ義光が舌を入れやすいように、教師は自ら唇を開いた。




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あきゅろす。
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