「ほら、な。三日間寝込んでて、随分溜まってんじゃないの? 抜いてやろうか」 「い、嫌だ。やめろ、小笠原」 「耳舐めただけでこんなに感じてるのに? アンタも素直じゃないねえ。ま、そこが可愛いんだけど」 「か、可愛くなんかない。僕は教師だぞ。君とこんなことをしていいはずがない」 「じゃあ着任早々、学校休む新米教師ってのはいいわけ?」 「う、それは」 咄嗟の返答が思い浮かばず、口では敵わないと判断した教師は、自由が利くようになった左手で自分の股間を覆っている義光の手を剥がそうと試みた。 「と、とにかくこの手を離せ」 しかし力でも敵わない教師がどんなに頑張っても、義光の手を引き剥がすことはできない。 むきになって格闘しているうちに偶然、義光の手の甲に手のひらを重ね合わせて自ら下半身を擦りあげてしまい、途端に走った疼きに身体をびくりと震わせた。 「あっ、ああ、ん…… やっ」 顔を背けて下から這い上ってくる衝動は何とかやり過ごしたものの、閉じることのできなかった唇の隙間から、甘ったるい声が漏れる。 「先生、俺を煽るのがホントに上手いね」 その一部始終を見ていた義光が、あらわになった教師の首筋に吸いついた。 「うんんっ! あ、煽るって、なに…… を? あっ、い、いやだ、小笠原。放せ、放しなさい!」 「だーめ。俺、昇降口でちゃんと忠告したよな。誘ってんのか、って。あん時は慣れてないんだろうと思って見逃してやったけど、アンタは懲りずに俺を独り暮らしの部屋に招き入れた。玄関で俺が躊躇ったのを見てただろ。こうなることを少しは期待してたんじゃないの。知らなかったとは言わせない」 「そんな、僕はただ……!」 「ただ、なに?」 余計なことを口走った、という後悔の表情を浮かべた教師の顔を、義光は覗き込む。 義光は優しい顔立ちの美男子だ。 けれどいつも微笑んでいるように見えるのは、彼の目尻が垂れているからで、物事を皮肉っぽく斜めに映す黒い瞳が決して笑ってなどいないことは、よく観察していればすぐに気づく。 そして大概の場合、人とは違う角度から義光が見ているものは、事の本質に限りなく近い。 |