采は投げられた
2
「やっぱ落ち着くな」
1年の頃、市と出会ってしまったあの後
使われていねぇこの棟で、良さそうな場所を見付けるのは簡単な事だった
応接室と書かれたプレートに惹かれ入ってみれば
適度にこじんまりとした広さの室内
窓もあり電気がなくても案外明るいその部屋に、置いて行かれたデカいソファーが一つとそれに見合ったテーブルと本棚が揃っていた
「いいじゃねーか!」
一目で気に入った
少し奥まった場所にあったせいか、他の不良の輩にも使われてねぇ
恰好の場所
その日からここは俺だけの空間になり
誰か別な野郎に邪魔されねぇように
特にあの二人‥‥
あいつらを撒いてから細心の注意をしてここに来ていた
だから今日も‥‥
「こんなとこが、あるなんてな‥‥」
変わらねぇ一日が終わって行くと思ってたのに‥‥
「な!」
「ここが神谷の居場所かぁ?いい場所だな」
「乃木!!」
珍しいそうに周りをグルリと見回していた乃木が
俺を見据え満面の笑みで立っていやがった
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