鬼に金棒
4
「お母さーーん、俺ね〜焼き鳥とだし巻き卵だろ?あと枝豆!」
「だから、俺はお前の母ちゃんじゃねぇ!つーか、それ最初に全部、二つずつ頼んでる」
「やっぱ気が利く〜!
あっ、佐和俺ねししゃも〜!ししゃも食いたい!」
「あーはいはい、分ぁかったから!あっ、店員さーん!
えっと…ししゃも二つ。あと、ビールをピッチャーで…それと、灰皿交換して貰ってもいいですか?」
何でこんな事になってんだ?
ふすまで仕切られた俺らがいる個室からも、ガヤガヤと話し声や足音が常に聞こえ、店が繁盛している事が伺える
俺達の他に営業の同僚が2人追加となって、結局5人でテーブルを囲っている真っ只中
食べ飲み放題で気兼ねない仲間内
だから……
「主任っ、今日も呑みっぷりイイっすね!じゃんじゃん行きましょう!」
同僚達が引っ切り無しに主任のグラスにビールを注ぐ注ぐ
荒木主任は主任で、注がれる為ビールを呑む事呑む事
そして俺は……
(気が気じゃないっつーの!)
「あの…荒木主任っ」
「あ〜?どうした佐和?
お前、全然呑んでねぇじゃねーか!
俺の奢りだって言ったろ?食えっ、呑め!」
「ぅ、はい。でも、その……あまり呑まない方が…」
「何だ、佐和?明日も仕事だからか?
それぐらい分ぁ〜ってるっつーの!
だから俺はなぁ、今日はビールだけにしてるんだっ!
んんっ…ぷはっうめェぇッ!!」
このダメ人間!
そう言ってあんた、いつも俺の前でデロンデロンじゃねーか!
意識無くすほど出来上がったあんたは、はっきり言って
同性の俺を簡単に狂わすぐらい
(可愛いんだよ!!)
そんな主任を他の奴に見せたくないのもある
いや、絶対に見せたくない
なのに
「佐和っ、注がねぇか!」
俺の気も知らないで!
と、思いながらもグラスにビールを注ぐ事は止められ無かった
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