知者は惑わず勇者は懼れず
3
「先輩?あのこの‥‥コーヒー‥‥
豆のままじゃ飲めないんですが‥‥」
「ん?豆のまま?
本当、だな‥‥なら、噛んだ後にお湯を飲めば同じじゃないか?」
明らかにおかしいッ!
いつも変だけど、こんな初歩的なミスなんてしない先輩が、本が逆さまになっていても気が付かないとか
豆のままビーカーに入れて渡すなんて事
有り得ないし‥‥
あ、もしかして‥‥
「い、和泉先輩?風邪ですか?」
「風邪?俺は風邪‥‥‥なのか?」
「いや、俺に聞かれても‥‥
じゃあ、熱計ってみますね?」
オデコに手を伸ばす
と、その手はオデコに辿り着く前に
「せ、せせ先輩ッ!?」
和泉先輩の手に捕まった
(なーー!!!
ぅうわっ、こ、これは恥ずかしいッ!)
先輩は何も言わずに俺の手をじっと見つめている
なんの変哲もない自分の手をそこまで熱心に見られると、なんだか落ち着かない
居たたまれなくなって逃れようとすると、ギュッと力強く握られた手
離さんばかりにさらに力を込めてくる
心拍数が物凄いスピードで打ち付けて
「あ、あぁああのッ!」
目の前の先輩にそろそろ離して欲しいと訴えかけた
「ん?‥‥ああ」
力がスッー‥と緩んだのもつかの間
「ぅひえっ!!?」
今度は腕を引き寄せられて俺は‥
だ、抱きしめられているーー!!
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