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知者は惑わず勇者は懼れず
3
「和泉先輩?」



ホント、寝てる‥‥‥
勝手な想像で、先輩はあまり寝ないと思っていた
けど


(この人も、こうやって見ると‥‥)


考えを巡らし思案する表情がないせいか
歳相応にも見えてくるから不思議だ



「こんな所で寝ると風邪、引きますよ?
‥‥メガネ、掛けっぱで疲れませんか?」


しばらく待ってみたものの、話し掛けた事に対しての返事はなくて
俺の言葉は空気に溶け合う様にスッと消えていく


「先輩‥‥」


ゴクッと鳴る喉の音
それがやけに大きく聞こえるのは、気のせいじゃない



「気、に入っている‥‥
とか、そんな事言わないで下さいよ」


肩に頭を預けている和泉先輩の顔を覗き込むと
途端に激しくなる動悸



「‥‥嬉しくて、俺‥‥
どうしたらいいんですか?」


磁石の様に手が引き寄せられて
その手はメガネに延びていた

カチャー‥

と、小さな音を響かせ外せば、初めてみる先輩のメガネの無い顔



「〜〜〜ッ!!
す、好き勝手されると困るんです‥‥
俺、男なんですよ!‥‥普通は男にあんな事しませんしッ!
常識で考えたって、有り得ない。有り得ないのに‥‥あんたのせいで」



そう、本当にどうかしてる
和泉先輩に顔を近付けている俺は。



「先輩のせいで、俺‥‥‥俺‥‥」


ドキドキするのに、一緒にいたいとか
恥ずかしいのに嬉しくて



「もう、自分が分かりません」


初めてだらけの感覚
触れたい気持ちが溢れ出て
ゆっくりと規則正しく寝息を繰り返す和泉先輩のその唇に顔を近付けた


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あきゅろす。
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