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知者は惑わず勇者は懼れず
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「う、うわっ!ひぃ‥‥うわぁああっ!」


ガタガタとイスを揺らせども緩む事の無い紐


「いぃい和泉先輩もう無理無理無理ですからァアアア!」

「まだ3本目だぞ?本当は実際体験してこそ、この二人の様に互いを信頼し心許すまでになるんだが」

「だからあんたそれ、マンガでしょーにぃいッ!!」


目をつぶっていようがいまいが関係なしに聴覚から、おどろおどろしい音と悲鳴、さらにはナレーションが入ってくる

本当にあった恐い話し‥‥
そんなDVDを見続けて精神がおかしくなりそうだ



「どうだ藤代、俺に対して感じる事はないか?」

「悪意しか感じませんッ!」

「何ッ!?」



何?って‥‥
本当に分からないのかこの人は?

俺と同じ様に隣でイスに座り、プロジェクタから映し出されている映像を平気な顔をして観ている先輩に

呆れて物も言えない


俺をこんな目に逢わせているのはあんただろ!
どう見方を変えても、この悪意が好意に変わる事はないですよ!



「何故だ?
お化け屋敷に入った二人は、親密になると本には載っているんだ!
そこで俺の考えだと、密室、二人、暗闇に恐怖この状況にすれば、ここでもそうなるはずだが‥‥
何故そうならん?」

「だから知りませんって!
ほら先輩!もうみんな帰る頃みたいですから、俺達も遅くなる前に切り上げましょう!」


扉隔てた廊下では他の生徒が元気いっぱいの声で

『じゃーなー!』


そんな別れの挨拶を交わしている
かなり時間も経過しているとみて、もう帰りたくて仕方ない



俺の言った事に対して
ハッと気が付いたそぶりを見せた和泉先輩は



「もう少し音量を上げてみよう
外界からの情報遮断が必要不可欠だ!」

「あんた何してくれとんのじゃああぁああッ!」



サラリと本気でさらなる嫌がらせをやってのけた


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