知者は惑わず勇者は懼れず 2 「意味が分からないな」 雑誌を静かに閉じ、俺を見た先輩は 馬鹿にしている口ぶりではなくて、本当に分からない そんな顔を見せる 「俺、見た目こうだし、だから‥‥‥ 不良に間違えられるのは日常茶飯事で、クラスのみんなには今だ目さえ合わして貰えないとかあって‥‥ ハハッ‥‥俺、恐いみたいなんです」 治せるもんなら治したい でも、そんな事聞いても建前と本音を使い分けるのが普通だ だから、和泉先輩ならハッキリと言ってくれると思った 偽りの嘘ではなくて、真実のみを‥‥ 「お前はお前だろ?」 「‥‥へ?」 「顔を上げろ藤代」 「うわっ、ちちちょちょっ!」 顎に添えられた指が、下を向いていた俺の顔をクイッと上げる と、視線が嫌でも絡み合い 沈黙と観察が先輩との間で入り交じる 「俺にはお前の何が恐いのか分からない その傷も、その髪の色も藤代、お前に合っている」 そう言った和泉先輩は、目を細め優しい笑みを浮かべた マズいです、先輩‥ 「他の奴の事は気にするな 俺はそんなお前が気に入っているんだ」 その言葉が胸に突き刺さる 一字一句脳みそに染み渡る 嬉しくて、嬉しすぎて 涙が頬を伝った [*前へ][次へ#] [戻る] |