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知者は惑わず勇者は懼れず
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スルリと顎を滑る指先
顎の下をコチョコチョくすぐるその指先に


堪忍袋の緒が切れた


「くッ!せ、せせ先輩止めて下さいッ!」

「犬は顎下を撫でられると好きなようだ」

「もう犬じゃありませんからッ!」



『ワンちゃんの飼い方−入門編』

そんな本を持ち、俺で遊ぶ奇人先輩のアジト
そうここは、いつもの準備室


来たら来たで、良くない事が起きる!
そんな事は百も承知だけど


教室に居られないから仕方ない‥
いや、居たくない‥‥からだ


あの催眠術は酷かった
あれから二、三日『実験』その言葉を聞くと‥‥


(思い出したくもないっ!!)


自分の意思とは関係なく、犬らしく取った行動
まだ和泉先輩の前だけならどんなに良かっただろう‥‥

運が悪かったんだと思う
まさか、先輩の言葉以外でも有効だなんて誰が考えるか!


くしくも授業は化学
先生の言った『実験するぞー』
その言葉に反応して威勢良く吠え、元気に駆け出した俺は


恐怖対象フラグを見事に立たせた


その為、いまだにクラスメイトとの溝が埋まりません


(そういえば‥‥)


目の前で真剣に犬の本を読む人物を見つめる
銀のフレーム眼鏡の奥で揺れる長い睫毛
スッとした高い鼻
そんな精悍な顔付きを見ていた俺は


「和泉先輩‥‥」



つい口を開いていた



「どうした、藤代?」

「先輩は俺の事、恐くないですか?」




家族の他に普通に接してくれているのは

辻先輩
志摩先輩

そして、和泉先輩だけだったから


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