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知者は惑わず勇者は懼れず
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「貴方はだんだん眠くな〜る‥‥」



目の前で紐にぶら下がったリングが揺れている
振り子の様に右へ左へと‥‥
それを見ていると、瞼が‥‥

閉じて行く訳がない


「あのぉ〜〜先輩?‥‥いい加減、止めませんか?」

「なぜ眠らん!!」

「だから、それ嘘っぱちですって!」



30分ほど前から催眠術のまね事を受けいる俺だけど、まったくもって

睡魔なるモノは襲って来なかった



「いや、何かきっとあるはずだ
振り子の速度に関係があるのか?まてよ、掲げる高さが重要なのか?」



諦める気配を微塵にも見せない先輩がブツブツと呟き、よく分からない数式を黒板に書いては思案、その繰り返し

志摩先輩も志摩先輩だ
よくこんな物を買ったもんだ
そして、むやみに物を与えないで欲しい



「分かったぞ!藤代、こっちを向け」



ほら見ろ、この嬉しそうな顔
こうなると止まらないのも学習した
仕方なしにまた先輩の揺らしているリングを見つめる



「先輩これで最後にして下さい!
何度やっても駄目なものは駄目なんですから。諦めも肝心って言葉がある様に‥」

「藤代、お前はこの『実験』で犬になる」

「へ?」


まだ俺がしゃべっている途中にも関わらず、パチンッと指を鳴らした先輩


なぜに‥‥犬?


だからと言って、さっきと変わった所なんて無いし‥‥


「先輩、もう止めー‥ワフッ!」


ん?
んんんッ?



「せ、先、ワンッ」


あれ?な、なんだコレ?
なんか普通にし、しゃべれないよーな‥
えーー、と‥‥


「ワンッ‥‥ッ!!!
ワン、ワン‥クゥ〜ン」


いよいよもって一言も出ないって‥
ははは‥‥


って、嘘!?
嘘だろ催眠術なんて!現実に有り得ない、あれはフィクションだろ、ヤラセだろ?
そんな曖昧な何かに俺がかかる訳‥‥


「ウォンッ!(ないッ)」


げッ、そんな!?


「お手」

「ワンワンッ!‥‥ッ!」


和泉先輩の出した手にすかさず重ねてしまう自分の手

つい条件反射ッ!!?


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あきゅろす。
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