知者は惑わず勇者は懼れず
3
「ち、ちなみに和泉先輩?
俺に何させようとしたんですか?」
フッ‥‥と今しがた、そんな疑問が頭によぎった
そして、最悪な事しか浮かばないのは
短期間に身に降り懸かって起きた出来事のせいだろう
失敗の原因を
あーでもない、こーでもないとブツブツと呟いていた先輩が
俺に何したかったのか‥
俺の疑問を聞いて先輩が顔を上げる
真っ直ぐの力強い目
その目に吸い込まれそうになった時
「ん?ああ、バケツを持って貰おうとした」
普通の答えが返って来ました
「へ!?ば、バケツっ!?」
なぜに!?
予想外の予想外
てっきり和泉先輩なら、きっともって
『深海に行って来い!何も身につけずに』
そんな事を俺に吹っ掛けて
水圧で潰れた俺を観察するぐらいすると思っていたのに!
「バケツぐらいなら‥」
「怠け者に、制裁を与える為の処罰らしいな」
「え?」
「両手と頭に水の入ったバケツ
そしてカカシの様に微動だにせず、そのままの姿勢で皆の失笑と珍妙な視線に曝され続け、廊下に何時間耐えられるのか‥‥
そんな肉体と精神に多大な圧を掛けられて
人間の忍耐と崩壊を調べたいと思ってな」
お‥‥
ぉおおーーッ
「思わないで下さいッ!!」
「だから、藤代もう一度飲め」
ひど過ぎる!
先生の
『廊下で立ってろ!』
を、ピンポイントにそこまで調べあげなくてもいいじゃないか!
のび太くんだって人間の限界なんて知りたくないんだよッ!
「む、無理ですからッ!」
またまたビーカーを差し出してきた先輩から逃げるべく
俺は、がむしゃらに走り出した
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