犬と猿
3
「は?」
「今日、楽しかったか?」
「は、ぁああッ!?」
急に何だ?
つーか、楽しかった、だ!?
そんなの‥‥そんなのッ!
「‥‥さ、最悪に決まってんだろーが!
テメェに負けて、今こんな事されてんのに、何が楽しいだ!!」
「それだけか?」
「あったり前だろ!他に何あんだよ!
俺が投げる時、くしゃみするとか姑息な手使いやがって!
あッ、お前!途中で俺の球変えただろ!
クソッあれさえなきゃ、俺が絶対勝ってたのに!」
まったくガキだって正々堂々って言葉知ってるっつーのに、コイツはッ
「なぁ犬井?」
「っんだよ!」
「羽鳥は?」
思いもしない人物の名前が登場して
突然の事で一瞬、何の話しをしていたか、ぶっ飛んだ
羽と‥り?
羽鳥?は‥‥
「はぁあ!?羽鳥?
何でそこに羽鳥が出てくるんだよッ!
関係ねぇだろ!訳分かんねー事言ってしかもまたチューしやがってー‥へ?
えーー、と猿?」
(なになに‥‥何だよ?)
もう一度、猿倉の顔を覗き見る
そこにあったのは、いつも上から目線の憎ったらしい顔‥‥
じゃなくって
耳まで顔を赤くさせて
目もおっきく見開いた猿
こんな猿、初めて見る‥
「お前やっぱバカだ」
そう呟いた猿倉が、嬉しそうに
泣きそうにも見える顔をほころばせ
(バカにされたっつーのに何で俺‥)
心臓が暴れ出す
ギューーッと抱き着いて来た猿倉を押し返す事も忘れるぐらいに
見惚れていた
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