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犬と猿
2
俺の沈みきった曇天の心情とは打って変わって
晴天の土曜日


そして体調はすこぶる好調
食欲も旺盛
風邪の『か』の字も知らない俺の体は健康そのもの



「行きたくねぇ‥‥」


と、言いつつも待ち合わせ場所に足は進んで行く




『土曜日、絶対来いよ。
もしブッチしたら、羽鳥にお前がどんな風に乱れて俺の口でイったか、事細かく盛りに盛った話しをするからな』



脅しじゃねーかッ!
あの猿ッ!
俺の思考を読むんじゃねーよッ!


と、また蘇る怒り
その怒りが


「イヌイッ、こっちこっち!」



笑顔で手を振って俺を呼ぶ羽鳥の姿を捉えた途端

あっという間に消え失せた
でも‥‥


「えーーと、羽鳥‥‥、と?」



羽鳥の側に行くと、小っちゃくて大人しい感じの女の子が隣に居て
心臓がギュッと鷲掴みされる


肩に付くぐらいの黒髪がサラサラと揺れる純日本、まさに大和撫子と言った可愛い感じ
ちょっと緊張した顔の彼女と目が合った瞬間



「あ、あの初めまして鬼塚ですッ」


ガバッと勢い良く頭を下げられた
丁寧なその態度に俺も釣られて頭を下げる


確か、隣のクラスの‥
話した事はないけど、たまに目が合うなぁとは思ってた



(そっか‥‥あれは羽鳥を見て)



その度に、ペコッとお辞儀をする礼儀正しい感じは覚えている


丁寧で
優しそうで
でも、しっかりと自分の意志を持っている子


(羽鳥が好きになる訳だ)



「は、初めましてッ‥えっと俺、犬井です
その今日はー‥」

「『バカ犬って気軽に呼んで下さいね!』」



ん?
言ってもいない言葉が頭上から降り注ぐ
ゆっくりゆっくり頭を上げてそこに見えたのは



「さ、さ、ッ‥」



ラフな格好なのに、周りにいる女性陣を振り返らせる魔力を放つ猿が
猿が‥‥



「さ‥猿テメェェエッ!なに遅刻しておいて、勝手な事、ほざいてんだオイッ!」



猿倉が我が物顔で立っていやがった


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あきゅろす。
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