犬と猿
8
(ヤ、バいッ‥‥)
クチュクチュ‥‥
と、響く水音と口の中に入っている生温い舌の感触
顔の角度を変えて、また深く重なる唇に全身から力が抜けて
腰を擦り付けられると、勝手に体が跳ねた
溶けそう
溶かされそう
「ッ、んはッ‥っはッ」
「俺だってな、我慢してんだこれでもッ!
好きな奴にだったら、思わず手ぇ出したくなるだろーが!
本当はな、もっとしたいのを我慢してるってゆーのに‥‥そんな事分からねーで、羽鳥ばっか見やがって!」
「訳解んねぇ事、ほざくなッ!
くそッ、またチューしやがったな!
羽鳥だけじゃなくって俺にも‥こんな事しやがってッ、どこが我慢だエロ猿ッ!」
はぁ‥‥と深いため息が降り懸かれば
猿倉のその目には半分呆れた色と、憐れむ色が写り込む
「まだ分からねーとは、トコトン馬鹿だな?」
「ばッ!の野郎ッ!また馬鹿って言いやがったな!」
「分かった‥‥お前の中から羽鳥を消す」
「は、はぁあああ?」
「泣くほどまだ好きなんだろ、羽鳥の事?」
痛い所を刺されてグッと詰まった喉では
当たり前だろ‥‥
とは口に出せなかった
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