犬と猿
6
コイツ、何して来た?
俺はコイツに何された?
唇に触れた柔らかいものって‥‥
もしかして、もしかしてッ!
「犬井?お前‥‥スゲー、顔真っ赤」
「ッ!!!」
スルリッと頬をなぞる指先に硬直していた体が
「し、死ねェエエエエッ!」
解けた
猿の腹目掛けて蹴りをめり込ませる
「ぐ、痛ッ!」
「テメェこのエロ猿ッ!二度と俺に触んじゃねェエエッ!」
ゴシゴシ、と袖で力いっぱい唇を拭いて
俺は教室から逃げるように、飛び出していた
「ちくしょう、ちくしょう、チクショウッ!」
ファーストキスがッ!
俺のファーストキスがあんな猿にッ!
女々しいって訳じゃない
だけど、好きな人と
羽鳥といつかは‥‥
そんな事思ってたのにッ!
「くそっ!クソッ!クソォオオオ!」
初めて感じた唇の熱さ
擦れ合う鼻先
口元で吐息が交じり合う感覚がまだ残っているようで
「あのエロ猿がっ!!」
何度も何度もその感覚が消えるまで
唇を拭うのを止めなかった
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