[携帯モード] [URL送信]

犬と猿
5
「お前さ‥‥」


呼び掛けられて顔を上げれば、ジッと俺を見てくる視線とかち合う

笑ってもない
怒ってもない

無表情の顔をした猿が一歩、足を踏み出した


「手ぇ出すって‥‥」


言葉を紡ぎながら、また一歩と距離を詰められる

なまじ体がデカい分、近くと迫力がハンパない
だから

縮まった距離を引き離そうと後ろに下がれば


「とと、ぁああのよ‥」


壁かよッ!


不本意ながら猿倉との間隔を開けようとしてただけなのに
結果、追い詰められていた俺の背中には壁


いつの間にか目の前にいる猿倉の右手が
スッと上がるのを見た


(ヤバい、殴られるッ!)


反射的に、目をギュッとつぶれば



「こういう事だろ?」



耳に届いた低い声
頬を滑るように伝う手のひら

そして、唇に柔らかいものが触れ



息苦しさ、と一緒に
熱い吐息が降り懸かる





「‥‥‥‥」

「‥‥い、おい犬?って、お前もしかして初めてとか?」



え?


「おい犬井?」

「ッ、ツ!!!!!」



俺を覗くように見て来た猿倉の顔を目に捉えた瞬間


何が起こったか理解した


[*前へ][次へ#]

5/6ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!