text onepiece 短編
Date 3
“刀に触んじゃねぇ!!”
怒鳴ってしまいそうになった、その時…腕に纏わりついていた女の体温が無くなった。
代わりに見慣れた黒いスーツが視界を埋める。
「失礼、レディー。こいつの相手はもう決まっています。遠慮していただいてもよろしいでしょうか」
タバコの香りと低く男らしい声に包まれて、ゾロは怒りで上がった体温が引いていくのを感じていた。
しかし女達は突然現れたもう一人の“良い男”に沸き立った。
きゃーきゃーと口々に何かを言う女に…ゾロはサンジの体に手を回した。
ぎゅっと抱き締め、もぞもぞと体の位置を動かした。
耳元で“サンジ”と呟くとそれだけでちゃんと分かったようだ。
「…いいのか?」
コクンと頷く…すぐさまキスがその唇に落とされた。
目の前でキスを見せつけられ、女達はようやくコックと俺から離れていった。
……
……………
…………………
無言のコックに手を引かれどこかへと連れていかれる。
移動する間もやはり何人もの女に声を掛けられ、その度にコックが巧みな話術で上手く躱す。
たどり着いた先にあったのは大きな大きな一本の木だった。
木、といってもただの木ではない。
赤や緑、金といった色とりどりの球が吊らされ、また多くの電球に照らされキラキラと光っている。
大木だけでなくその周りにたくさん並ぶ店々も綺麗に飾り付けがされていた。
「ゾロ、どう?気に入っ…何で泣いてんのっ!?」
ここに来るまでゾロの顔を見ていなかったサンジは滅茶苦茶動揺した。
…いや、まだ泣いてはいない。唇をぎゅっと噛み締めて目を潤ませ俯いてしまっているが、まだ泣いてはいない。
「ゾロ、ゾロ、どうした?唇切れちゃうだろ。」
黙っていると噛み締めている唇をサンジの長く綺麗な、しかし男らしい指がなぞった。
「ゾーロ…ゾロを傷つけるのはお前でもゆるさねぇぞ?」
そう言うやいなや…噛み締めていた唇に熱が押し付けられた。
舌が無理矢理口をこじ開けて口内を貪られる。舌と舌とが絡まり、ピチャピチャという厭らしい水音が漏れる。
息が続かず合間合間に酸素を取り入れようとするが鼻につくような甘い声が…自分の喉から溢れていたたまれない。
好き勝手に蹂躙され…最後に歯茎をぐるりとなぞられ…ようやくサンジの舌が離れていった。
それだけで腰の砕けてしまったゾロを支えるようにしながらサンジは至近距離で惚けてしまっているゾロの顔を覗きこむ。
「ゾーロ」
優しく呼ばれ…ゾロはポツポツと話し出す。
だって…サンジ、俺が声掛けられると不機嫌になるから…
だから今日…船から降りたくなかったのに…お前に誘われて嬉しくなってつい降りちまうし…。
なのにやっぱり声掛けられた。またお前が怒る…。
時々言葉を詰まらせながら言ったゾロをサンジは抱きしめた。
「ごめん。ごめん…俺の所為だよな。ゾロに怒ってる訳じゃねぇんだ。ゾロに声掛けやがった野郎と…ゾロの魅力に気付いたレディー達にの嫉妬と…躱せ切れなかった自分に怒ってんだ。」
お前は悪くない、と伝えるとゾロが、んと鼻声で頷いた。
ホッとしていると…
「怒ってもいいから…嫌わないで…」
……
………
…………か、
「…か」
「か?」
「かわいいいいぃぃぃいいいぃぃぃ!!!!」
「か、可愛くねぇっ!」
「いやいや、これが可愛くなくてどこが誰が可愛いんだ?ゾロ〜めっちゃ可愛いよ〜♪」
「めっちゃとか言うな!」
5…10分ほどぎゅうぎゅうと抱きしめてからサンジが離れた。
「…はぁー…はぁー……ゾロ、お前は時々爆弾を落とすよな…。」
「…訳わかんねぇ。」
がっくりと肩を落としているとサンジは抱きしめたままピアスの付いているほうの耳に顔を寄せ…
「安心しろ。俺がお前を嫌うことだけはあり得ねぇからさ。」
囁くと同時に耳に口付ける。
真っ赤になっているゾロ…可愛いよなぁ…。
…と、ヒューウという口笛が響いた。
「見せつけてくれるわねぇ!」
「お、俺は何も見てねぇ!!な、チョッパー」
「お、オウ!!」
「フフ、剣士さん可愛いわ」
「オメーら宿でイチャつけよ!!」
「ヨ〜ホホホホ〜」
(あ、そういえばここ外だった…。←オイ!!)
いつの間にか周りにいた仲間達…いつも間に合流したのだろうか?…それに加え遠巻きに見ている人々…。
今更ながらそれらに気付いたらしいゾロが…これ以上ないほど真っ赤になる。
(あぁ、殴られるかな…。まぁいいか。可愛かったし…)
しかし予想に反してゾロはその顔を隠すようにサンジのスーツに顔を埋めた。
「…!?!?」(←サンジ((笑笑 )
「あら…」
「くすくす…。今日の剣士さんは甘えたさんなのね。ほら、もう行きましょう」
美女二人に連れられ仲間達が去っていく…。
「…何、今日は甘えたさんなの?」
「……うるせぇ」
「クス、かーわい」
…後には人の目も気にせずイチャつく男二人だけが残ったとか…。
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