text onepiece 短編
煙火 (SmA)
ふと、たどり着いた島
なんとなく、あいつが居そうな町だなと思った。
「たしぎ、少し出る」
右腕でもある自分の部下にそう言うと一瞬着いてきそうな雰囲気がしたので黙って“正義”と書かれたジャケットを放り投げた。
違う部下の出してくれたただのジャケットを羽織る。
“海軍のスモーカーとしてではなく、ただのスモーカーとして出る”
言外のメッセージに、たしぎはその場に立ち止まった。
「…いつ頃戻りますか?」
「明日の朝か夕方」
“居ないなら朝、居て…会えたなら夕方”
会える確率なんてとても低い。
それでも…スモーカーは任務が無くて、あいつが居そうな島に寄った時は一番に探すことにしている。
勿論、“正義”の字をその背中から降ろして。
「分かりました。お気をつけて」
たしぎは勘づいているだろうに口出ししない。
まぁ、、あいつにも気になる海賊の男が居るみたいだしな。
「…あぁ。行ってくる。」
……
…………
…が、島の中心部で何やら険悪な雰囲気の騒ぎを見つけ、そうも言っていられなくなった。
舌打ちをして、見物人を押し退ける。
迷惑そうな顔をされるが、海軍だと言うと気まずそうな顔となった。
「…で、その騒ぎを起こしてんのがよりによってお前か…」
ため息と共に喧嘩をしているそいつとその喧嘩相手を同じ力で思いっきり殴り付けた。
喧嘩両成敗だ。
ついさっき海軍だ、と告げてしまったが今の俺は“ただのスモーカー”だしな。これぐらいでいいだろう。
「いってーーー!!!何すんだこ、の…ス…す…素敵なダーリン??」
うねった黒髪のそいつ…
一応は俺の恋人
そしてかの有名な“白ひげ海賊団”の二番隊隊長のポートガス・D・エース
…は、殴られた痛みから怒鳴るように振り返り、俺の姿を見て一瞬目を真ん丸に見開き、容易に“スモーカー”と呼びそうにしてから…馬鹿みたいな誤魔化し方をした。
…間違えた。馬鹿みたいな、なんかじゃない。馬鹿だった。
「…探したぜ、ハニー………って言えば満足か?」
まったくの棒読みでそう言ってやればエースは若干顔を赤らめうるせー、と呟いた。
おいおい、そんな顔するんじゃない。
ここにいるどれだけの奴がお前をポートガス・D・エースと気付いているのか知らないが、ホモだという噂がたったら困るんじゃないのか?
「…ったく。
あー、おい、こいつは俺が責任をもって仕置きをしてやるからそれで勘弁してくれ」
喧嘩相手の男は不満そうな顔をしたが、少しの殺気を滲ませれば押し黙った。
エースの腕を掴み歩きだす。
エースは…自分で歩こうとはせず、ずるずると引きずられるが、逃げ出そうとはしないので合意と取っていいだろう。
適当な宿で男二人ということに好奇の目を向けられながらも気にせず部屋を借りる。
ドアを閉めて…直ぐに抱きしめた。
久しぶりのエースの体温に体の力が抜けるのを感じる。
エースも暫くスモーカーの腕の中でじっとしていたかと思うと、ほぉっと体をスモーカーに体を預けその腕をスモーカーの背中に回した。
「…スモーカー…本物のスモーカー…だよな…」
「…あぁ。前にアラバスタで会った時から2ヶ月ぶりぐらいか?」
「…会ってなかった間に浮気してねぇだろうな?」
「…してない。お前は?」
「…スモーカーに会えないかっていつも考えてた」
腕の中で、そんなことを言うエースが愛しくて…
「うわっ!」
ガバリと抱き抱えてベッドへ向かう。
「…す、スモーカー、あんまり重いモン抱えたら腰痛むぜ?」
「…年だ、とでも言いたいのか?」
くすくすと笑いあいながらエースをベッドに下ろす。
「久しぶりだから最初は痛ぇかもな。」
痛いのは嫌だと喚くエースを押さえ込み、にっこりと笑う。
滅多に見せない俺の笑顔にエースが固まった隙をつき口付ける。
「さっきの喧嘩相手に責任を持って仕置きするって言っちまったからな。…覚悟しろ」
さぁっと青ざめる顔を見てその首もとに顔を埋める。
ちゅう、と遠慮なく吸い付けばその体がピクリと震えた。
離してみると綺麗な朱の花弁がくっきりと浮かんでいた。
「安心しろ。痛くはしねぇ。」
ズボンを脱がし、太ももにも花弁を散らす。
「お前は堪え性が無いみたいだからな。じっくりじっくり…抱いてやるよ。」
……
……………
次の日の夕方、軍艦に戻ってきたスモーカーは実にスッキリとした顔で…いつもの葉巻すら吸っていなかった。
対するエースは腰が抜けてしまいスモーカーの取った部屋で一日休んでいたが…立てるようになるや直ぐに昨日の喧嘩相手をさがしに行った。
「み〜つっけた〜。
……テメェのせいで昨日は散々だったんだぞ!!!!
火拳!!!」
燃えた町の報告が挙げられたスモーカーが頭を抱えて“海軍のスモーカー”として再び町に戻ってきたのは言うまでもない。
おわり
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