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text onepiece 短編
溜まった涙は零れ落ちたT

ガンッ!!!!!!

大きな音が響いて、ナミの悲鳴が聞こえてきた。
刀を掴んで甲板に出る。
殺気も敵の気配も何も感じなかった。何が起こった?
ざっと目を走らせれば、皆が注目する先にいつも通りにスーツを着たコックが力なく倒れていた。
「コック…?」

スーツには真っ赤な血がべったりと付いていて、ゾロの血の気がさっと引いていく。
駆け寄ろうとしたゾロを止めたのは体から生えてきたロビンの手だった。

「ゾロ!!サンジは頭を打ったから動かしちゃダメなんだ!!」

「そうよ、落ち着いて。サンジのあれは血じゃないわ。」

治療をしていたチョッパーも駆け寄ろうとしたゾロに気付き、声を上げる。

「血、じゃない?」

「ええ、サンジの作っていたトマトジュレよ。」

そう言われてよく見れば、サンジの体にべっとりと付いている赤は所々塊になってキラキラと光っている。
焦っていた心がほんの少し落ち着く。

「…何があった?」

回りを見渡せば落ち込んでいるルフィとウソップ、それからサンジの様子を見ながらも気落ちしていることが伺えるチョッパーが目に入る。
心配そうにしながらもナミが呆れた、という態度を装ってため息を吐く。

「サンジ君からおやつを奪おうとしてたらジュレがトレイから落ちそうになっちゃってね、ジュレに気を取られたサンジ君ごと階段から落ちちゃったのよ。」

もう、あんた達もサンジ君もバカなんだから。
サンジ君が起きたら謝るのよ

ナミの説教とも慰めとも取れるやり取りが続く中、ゾロの意識は眠り続けるサンジだけに注がれていた。
未だゾロから咲いているロビンの腕だけが大丈夫よ、とでも言うように背中を撫でる。

「いってぇ…」

皆の視線が一斉にサンジの元に集まる。
むくり、と起き上ったコックは頭を摩りながら起き上って、甲板を見渡した。

「…何だ、この…珍獣達は…」

二足歩行のトナカイ(タヌキにしか見えないが)
動くガイコツ
ナミの制裁によって頬を伸ばされたゴム人間
人間とは思えない変態に鼻、手が体中から生えた男
確かにそこは(女以外)人かと疑う者しかいないだろう。
…今までの冒険の記憶がなければ…。

コックはとてもよく晴れた日の午後三時に、これまでの記憶を失ってしまった。


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