text onepiece 短編
この気持ちに、名をつけて
ガッシャン!!
楽しげだった夕食の途中、食器の割れる音が響いた。
しん、と静まり返ったダイニングで普段はあまり感情を露わとしないゾロが一層感情の抜け落ちた表情で立ち上がる。
彼の周りには割れた空皿が数枚、床に散らばっていた。
「もういらない。ご馳走様。」
「おいゾロ、待てよ!!」
サンジの止める言葉にも振り返らず外へと出ていく。
蜜柑畑へと行き、木々の間にごろりと体を転がせた。
夕食の前、珍しくコックが今日のデザートな、頑張ったんだぜ。と楽しげにゾロに囁いたのだ。
喧嘩腰ではないその物言いと自分に向けられた笑顔にゾロは何故か嬉しくなった。
別にコックの作る料理は何だって美味しいのに、そんなコックが頑張った、と行った料理を食べるのがそんなに楽しみだったのだろうか?
けれど、それを横で聞いたルフィが早く食べたい!!とサンジにしがみつくのを見て、もやっとしたものが心に浮かぶ。
サンジはすでにルフィのほうを向いてしまい、まずはメシからだ!!といつものように怒鳴っている。
それ以上、こちらを向くことは無くて、、、少しだけ胸が痛んだ。
ご飯は相変わらず旨くって、それでもルフィがデザート!と叫んでサンジにまとわりつく度にイライラとチクチクが混ざり合ったような感情が何度も浮かんだ。
サンジだって少しは我慢をさせればいいのに…ルフィを甘やかしてどんどん食わせる。
「サンジ!!まだぜんっぜん足りねえ!!早くデザート!!」
「まぁ待て、今日はもう少し料理追加してやるから…。」
そう言いながら今日何度目かキッチンへ立とうとしたサンジに、ゾロはどうしても耐えられなくなってしまったのだ。
ルフィを甘やかすサンジに?
いちいちサンジに抱きつくルフィに?
ルフィばっかりでこちらを見ようとしないサンジに?
…とにかく、何かが耐えられなくってゾロは本来戦闘に使うための刀で皿を叩き割ってしまったのだ。
サンジの作った料理だけは無駄にしたくなかったから、床に散らばったのは空皿の破片ばかりだ。
しかし、クルーの目は驚きに染まっていた。
キッチンへ行こうとしていて振り返ったサンジも、、、。
「もういらない。ご馳走様。」
こう言うことでゾロの分の料理がルフィの腹に入ってしまえば良いと思った。
これ以上、あの空間にいたくなかった…。
「…何なんだよ…。」
「それは俺のセリフ。」
ぽつりと呟いただけの言葉に返事が返ってきて、ゾロは驚きに目を見開いた。
寝転がったまま上を見上げれば反転した世界にサンジがいた。
手には一つのトレー。
ぱちぱちと瞳を瞬かせれば、サンジが思わずといった風に笑った。
…怒って、いないのだろうか?
呆然としているとトレーを差し出される。
「…??」
「頑張ったデザート。これ、食ってよ。」
良いのだろうか?と躊躇していると手のひらに皿を乗せられ、慌てて上半身を起こした。
「え…。」
黒い皿の上に乗せられたそれを見て…再び固まった。
ふわふわとかけられた優しい色のきな粉
透明なもちの中に餡が透けていて…
子供の頃に食べたお菓子にそっくりだった。
丁寧にも竹の串が供えられていた。
吸い寄せられるように手を伸ばし、一口で食べる。
ひんやりとした感触に優しい甘さ、餡が程よく絡まって、懐かしい味が口に広がった。
「うまい?あ、緑茶も持ってきたんだ。飲むだろ?あとおかわりもあるからな。」
差し出された緑茶を素直に飲めば、サンジの優しい声が落ちてくる。
…何でこいつは俺の故郷の菓子など作れるのだろう?
そう思えばサンジが思考を読んだように答える。
「だってお前、前の島できな粉見た時何か考えてたからさ、ちょっと調べてみたんだ。したら“おはぎ”とか言うのもあったんだけどさ、ゾロはこっちかなって」
で、作ってみた。
どうだ、うまいだろ?
確かにきな粉を見た時、故郷のお菓子を思い出した。
それでも作り方や材料すら分からなかったからコックには黙っていたのだ。
なのに…
笑いかけられ、何だか泣きたくなってしまった。
何でだろう?別にどこも痛くないのに??
「なぁゾロ、さっきさ…どうした?」
サンジの優しい声がゾロの心をふわりと溶かす。
導かれるようにまとまっていない考えを口にした。
「わかん…ねぇ。ルフィとお前がくっついてんの、見たくねぇ。お前が笑うと嬉しいのに、ルフィにばっかり笑うの、嫌だ。ルフィとくっついてんの見たくなくて、つい…割っちまった。」
「…ルフィが俺にくっつくのが嫌?」
こくん、と頷けばサンジはもう一つ尋ねた。
「お前は?お前は俺にくっつきたい?」
少し考え、こくんと頷けばサンジは困ったように、しかし顔を赤く染めて呟いた。
「…お前、それってさ…」
こそ、と耳元で囁けば、ゾロは顔を真っ赤に固まった。
「え…え?………えぇ??」
うわ言のようにえ?を漏らすショート寸前のゾロにサンジは優しく笑って見せる。
「俺はお前にそれをいっぱい食わせてやりたくてゴムにたくさん食わせてたんだぜ?」
優しく、優しく、怯えることなんて何もないんだ、とわからせるように…。
ゾロが、ぐっちゃぐっちゃのこの気持ちに名前を付けて口に出すまで…あと数秒…。
「…す……だ。」
「…うん。俺も」
ーーーーー
イチゴ大福様…たいっへんおまたせいたしましたーーーーーm(TT)m
…いつもリクエスト早くに頂いているのに…私はもう何日も…ほんっとうにごめんなさい…。
好きに気付けないゾロちゃん、、、リク通りになっているかは自身がありませんがUPしちゃいます…。
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