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ローグタウン
ようやく嵐を抜けた。
メリー号は今嵐の後の静けさの漂う夜の海の上にいた。
ルフィは一度海に落ちて引き上げられてからは部屋の中に押し込められた。
ウソップとナミは流石に疲れてしまったらしくもう寝てしまった。
つまり、今はもう寝てしまうよりもこのまま仕込みを始めた方がいい時間となってしまったサンジと寝ず番を自ら引き受けたゾロの二人しか起きていない。
サンジは軽くつまめるものとゾロの好きそうな酒を…少し考えてから温め、それらを一つのトレーに乗せてマストの下へ、なるべく気配を出して、足音を立てながら近付いていった。

「ゾロ」

少し待つと、見張り台の上から緑頭が表れる。

「夜食、食うか?」

食える気分じゃねぇなら俺が食うぞ、と付け加えてやるとこくんと頷くのが見えた。

…これは…食いたい気分だ、って取っていいのか?
少しは読めるようになってきたとはいえ、ゾロの返事は分かりにくい。
まぁ、食わないから食べていいという意味だったら酒を呑むゾロと一緒に食べればいいか、とマストを登り始めた。

見張り台の上からトレーを受け取ってもらう…のはありがたいが…

「おい、何で半袖なんだ?」

ついさっきまで雨だったから今は若干寒く感じるくらいだ。
よく見るとゾロの顔も白くなっていた。

ちょっと待ってろとそのままマストを降りる。キッチンから寒いときに使っている毛布を取って、再びマストに戻った。口いっぱいに頬張るゾロは可愛いし、酒を呑む度上下する喉仏も色っぽいので見れなかったのは残念だと思いながら戻ったが…予想に反してどちらも口をつけられていなかった。

「どうした?やっぱり食いたくなかったか?」

「…いただきます」

サンジの問いかけには答えず、ゾロはそのままパンと手を合わせるとゾロの好きなジャコを混ぜ込んで作ったおにぎりをムシャムシャと食べ始めた。
温めてきた酒を珍しく酌に注ぎ、ぐいとあおる。
再びおにぎりを口に運び、大きく口を開けて囓る。

もぐもぐ…
            こくこく…
   もぐもぐ…
                 …ごくん。


「…ご馳走様でした。」


…はぁ…。


全部食べ終えたゾロの口から長い長い吐息が洩れた。
それを少しだけ離れていたところに座り眺めていたサンジは“ん”と返事をすると食器を脇に退け、持ってきた毛布を差し出した。
受け取ろうと手を出し…ゾロは動きを止めた。

「お前は寒くないのか?」

「…寒くないって言ったら嘘だが…お前ほどじゃねぇ。キッチンにはこれ一枚しかねぇから部屋まで取りに行ったらナミさんを起こしちまうかもしれねぇしな。」

その言葉に…ゾロは少しだけ考えこみ…毛布を受けとると少しからだをずらしてサンジの真横に体を寄せる。
勿論動揺したサンジだったがその体の冷たさに驚いた。
その隙にゾロが毛布を広げ、二人の体を包み込んだ。

「こうすれば二人とも暖かいだろ」

てかお前の体あったけぇ、と擦り寄ってくるゾロに…サンジは動揺しすぎて逆に本来の目的を思い出した。

「そうだ。…お前、温かいメシ食って少しは落ち着いたか?」

一瞬目を見開いたゾロだったが、直ぐにいつものように眉間に皺を寄せた。

「…目敏い」

…んな拗ねるように言われても可愛いだけだぞ?

「お前…ゾロが分かりやすすぎんだよ」

煙野郎のあの町を出てから本の少し様子のおかしかったゾロ…。

「…名前」

サンジは船に乗ってから初めてゾロの名前を呼んだ。

「…今日、弱ってたみたいだから」

「………」

「………」

「…今日、な」

「うん」

「今日、くいなにそっくりの女に会ったんだ。」

「…うん」

くいなちゃんという女性のことは以前ゾロと呑んだ時に少し聞いていた。
大分強い酒を何本も空けていたからゾロも少し酔っていたのかもしれない。
いつもと変わらぬ態度で、白い刀を握りしめて…くいなちゃんとの思い出を話したのだ。

二千回以上勝負をして、一度も勝てなかったこと…
それなのに自分は女だから強くなれないと泣かれたこと…
どちらか一方が世界一の大剣豪になると約束し、その翌日に階段から落ちて死んでしまったこと…


その約束を守るために、ゾロは今、彼女の刀を振り続けていること…


「そっくりだったんだ…くいながでかくなったらああなるんだろうなって」

「うん」

「言うことも同じようなことでよ」

「うん」

「違う奴なのに、懐かしくて…」

「うん」

「………」


ぽすん、とゾロの頭がサンジの方に沈められた。

「…生きてて欲しかったって…思ったんだ。…もう、どうしようもないことなのに…よ。」

「…うん」

サンジは少し躊躇ってから自らの肩の上の緑の頭をぽんぽんと撫でた。

「…なぁゾロ」

「…ん」

くぐもった声が短く答えた。
若干、その耳が赤いのは弱さを見してしまった自分への恥か頭を撫でたことに対する照れか…。
後者だったらいいな、と思いながらサンジは続けた。

「俺はくいなちゃんが羨ましいよ。」

「………」

「死んで、さ。一番悲しいのって忘れ去られることじゃねぇかと俺は思う。」
「考えてみろよ。死んで、忘れ去られて、、、自分の存在していた証が無くなっていっちまうんだぜ?…俺は嫌だね。」
「でもよ、くいなちゃんはお前が覚えててくれる。死んでも、お前が想っててくれてる。…それって大分、羨ましくないか?」

ぽん、ぽんと撫でながらゆっくりと語る。
ゾロは無言で、サンジの肩に顔を押し付けたまま聞いている。

「だからよ。んな顔してんなよ。」

「…どんな顔だよ」

「…感情全部切り殺して、凍っちまったような顔」

「…んだよ、ソレ」

くくく、とくぐもった笑い声が響く。

あぁ、やっと笑った。

サンジはほっと体の力を抜いた。
肩から離れようとしないゾロを見てまあいいかと再び頭を撫でる。
ゾロはその手を払い除けようともしない。
心地良い時間が流れる。

「……なぁ、コック」

「…ん?」

「お前はくいなが羨ましいって言ったけどよ…。お前が死んでも、俺はお前を忘れないぜ……サン、ジ」

「…え?」

ぽつり、ぽつりと言葉を紡いだゾロは…言い終わるとサンジの体の上へと倒れこんだ。
一瞬焦ったサンジだったが、ゾロの口から安らかない息が洩れているのを確認して、なんだ寝たのかと安堵する。

……寝…た?

はたと気付き…サンジは辺りを見渡した。
朝が近いとはいえ、周囲はまだまだ暗い。
つまり、一応は夜

夜、なのに、、、ゾロが、寝ている。

いつも警戒心丸出しで、絶対に夜は寝ようとしないゾロが…
サンジの温もりに触れ、その体を無防備に預け…眠っている…。
そのことに気付いたサンジの顔が…真っ赤に染まる。

これは…少しは信頼してくれていると自惚れてもいいんじゃ…てかこれ膝枕じゃねぇかっ!!
その前にも大分嬉しいこと言ってもらえたし…。

あぁぁ〜!!なんて幸せなんだ〜!!!
海賊になって良かった〜〜〜!!!




…結局、サンジはゾロを膝から退かすことが出来ず、動かずにいた結果眠ってしまい、次の日の昼間にようやく起きてきた仲間達に発見&叩き起こされ、その日の朝御飯は昼も兼ねて2時頃に出された。

しかし朝、ゾロを起こした際に…
「俺…寝てたのか…??」
と、きょとんとする可愛いらしい顔を見れたサンジ(とルフィ)の機嫌は良かった。



ーーーー

反省…
長くなりすぎました。
二話に分ければ良かった。
あと、船の構造、、、これほぼ書き終わってからコミックで見つけて読んだんですが…メリー号って女部屋別にあったんですね!((苦笑))
ナミも男に混ざって雑魚寝かと…て、んな訳ないですよね…。
あとローグタウンからはすぐにグランドライン入ってるし…

………まぁ、これは由宇の妄想ということで!(笑)
ほんとは文才なくて直せなかっただけ…(。>д<)
これからもちょくちょくあると思います。
またか、と思いつつ生暖かい目で見守って下さいm(__)m


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