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Valentine
2月14日…
今日はいわゆるバレンタインデー
しかしここは船の上…。そして俺はコック
いいんだ。いいんだ…。
ナミさんに喜んでもらえるならバレンタインにチョコだって喜んで作らせていただきますよ。
それに…密かに想いを寄せるゾロに手作りのチョコを食べさせたいし
と、手の込んだチョコレートケーキを作り鍵つき冷蔵庫に入れたのが昨日のこと。

そしてバレンタイン当日の今日…。
ナミさんと…何故かゾロまでもがキッチンを貸して欲しいとやって来た。
飯もチョコもすでに作ってあるから、とキッチンを明け渡したのが二時間前…。
ナミさんから手作りの生チョコをいただき、サンジはご満悦だ。

…が、やっぱりゾロが気になる。
ナミさん曰くチョコを出して何やらやっていた、とのこと…。
……気になる。気になる気になる気になる気になる…。
何作ってるんだ?
チョコってことはやっぱりバレンタインだからか?
てか誰に渡すんだ?
…うあーーー!!!気になる!!!!

…で、ウロウロウロウロ甲板を歩き回って“鬱陶しい!!”とナミさんにキッチンに放り込まれたのがつい先程…。
そんな容赦のないナミさんも大好きだーー(泣)
見慣れたキッチンには見慣れないゾロがいて…

チン♪

「お、焼けた」

今しがたオーブンの中から取り出した鉄板の上に乗っていたのはチョコレート味のカップケーキ…いや、一つずつカップケーキの型に入れられたガトーショコラだ。
…や、やっぱりバレンタインかっ!!
てかゾロお菓子なんて作れんだな…意外だ。
呆然と見つめているとゾロが作ったばかりのガトーショコラを一つ、口の中に放り投げようとしていた。

「ちょ、ちょっと待て!!」

キッチンに入ってきた時からずっとサンジを見もしなかったゾロがようやく振り返った。

「あ?」

…なんか若干凄まれてる感があるが…ここはコックとして譲れない!!

「菓子類は少し置いて熱を取ると味が落ち着いて旨くなるんだ。だから食うならその時にしろ!せっかく旨そうに出来てるんだ、勿体ない!!」

思わず熱説してしまうとゾロもお、おうと押された様に頷いた。
しかしその目は名残惜しそうにガトーショコラに向いている。
…ん?もしかしなくても…コレ、自分用だったり…する?

「…お前、ガトーショコラ好きなのか?」

少し遠回し気味に聞くとガトーショコラ?という返事が返ってきた。
仕方なくチョコレートケーキと言い換えるといや別に、と否定の言葉。
…だったら何でんな目キラキラさせてガトーショコラ見てんだよ。

「…だったら何で」

「ん?これか?これ別だ。お前の作るもんも旨いけどもっと甘くないもんが食いたくってな、昨日チョコの匂いが凄くて前どっかの島の女に教えてもらったコレ思い出したんだ。」

…え゛?何その“特別”みたいな言い方
特別なのは“ガトーショコラ”?
それとも…教えてくれた“女”?

ゾロと俺との間にあるのは同じ船に乗っている仲間という関係性だけ。
そう言えばゾロから女性の話なんて聞いたことがない。ライバルはルフィだと思っていたが…くそぅ、盲点だった…。
不安に飲み込まれそうになったサンジにゾロはそうとは知らずに救済の言葉を呟いた。

「コレな、酒がたっぷりで甘くなくて旨いんだ。海賊狩りの頃毎年こんぐらいの時期になると作ってくれって頼まれたぐらいだぜ。」

にかっと自慢げに笑っているが…それって“ゾロ”からバレンタインのチョコ貰いたかった奴が多かったってことじゃないのか…?
まぁ、可愛いから言わないが。
てかゾロはバレンタインって認識はあるのか?

「で、思い出したら食いたくなって、作った!」

もういいか?とガトーショコラに手を伸ばすゾロ…
う〜ん…なんて言ったらいいか…。

「まだ温いだろ。菓子は冷めてからが旨いんだよ。…ちょっと待ってろ」

早く食べたい、といった様子のゾロ
…あれ?俺のメシの時にんな態度の時なんてあったか!?
…まぁ…いいか…可愛いし…  ((遠い目

ゾロを待たせて冷蔵庫の鍵を開ける。
昨日作った大きなガナッシュケーキの横にちょこんと置かれた小さな…と言っても普通に一人前のガナッシュケーキを取り出す。
振りかけられた金箔が美しい(自画自賛)
いつものおやつの時間にゃまだ早いが…まあいいだろう。
ほい、とゾロに手渡すと流石に嫌そうな顔はしなかったが困惑していた。

「俺普通に甘いケーキは苦手…」

「…ん」

しかしその皿をつき出すとゾロの手が伸びた。
フォークも渡すとサンキュと言われた。

「いただきます」

挨拶はしっかりと。
一口分だけ切り崩し…そのフォークが皿と口との間でさ迷う。
だよな、見た目は普通に甘そうなケーキだもんな。
…しかし、匂いでようやく気付いたのか、その動きが止まった。
目を真ん丸にしてサンジを見る。
にこ、と笑ってやると急ぐようにフォークを口へと入れた。
きっと口に入れた瞬間に広がるだろう。
ショコラを押すほどの洋酒の味が…。
だが、それだけではない。酒の味に殺されない程度に絶妙なバランスで入れられたショコラの上品な風味がさらに酒の味を引き立てる。
どうだ?と半分自信たっぷり半分ドキドキしながら見ていると、ゾロのフォークが再びケーキに向かう。
掬い、口に運び、再びケーキに向かう。
手が止まったのはケーキが無くなった後だった。

「あ、ご馳走様でした。…旨かった。」

はぁー、と満足そうに息を吐き出すのを見る限り本当に旨かったんだろう。

「あ、でも作ったケーキどうすっかな。んな何個も食えねぇし…」

自分の作ったケーキのことなんてすっかり忘れてたらしい。
…よっしゃ!!

「ま、ルフィにでもやるか。…いやでも滅茶苦茶酒入れたんだよな。」

ま、いいか、と持っていこうとするゾロの腕をサンジはガシッと掴んだ。

「…?」

無言で首を傾げるゾロに…


「なぁゾロ、俺が作ったケーキ、あれな、皆の分しかねぇんだ。ナミさんには生チョコをいただいたがあれだって他の奴らも貰ってるだろうし俺だけ不公平だと思わないか?それに加えてお前のケーキまでルフィにやったらいくらルフィがゴムだからって流石に太るぞ。太ったキャプテンなんて嫌だろ。だからそれは俺にくれ」


…一息で言った。
(いや、普通無理だろ!?)

押されて頷いたゾロ…その瞬間ゾロの手からケーキが消えた。
見るとすでにサンジの腕の中だ。
……いつの間に!?

「いただきます」

がぶりとケーキにかぶりついたサンジはあまりの酒の強さに驚愕した。
これじゃ…チョコレートケーキってより酒ケーキだ。

「旨いだろ。これ食いながら酒飲むのが好きなんだ。」

にこ、と笑うゾロに…悪意なんて見られない。
これと一緒に酒って…酒食いながら酒飲んでるようなもんだろ…。
あ、酒食ってると思えば旨いな。

「うん旨い。残りは今夜の見張りん時酒と一緒に食うか?」

旨い。旨いよ、ゾロ。
ゾロが作ったと思えばその旨さも倍増する。
…けどな、俺はお前と違ってザルって訳じゃないんだ。
酔っぱらってしまう前に、と提案するとゾロは目を輝かせた。

「おう!!」

…可愛いなぁ。




何だかんだでお互いのチョコレートを渡すような結果となったバレンタインだった。

その後、サンジのガナッシュケーキが気に入ったゾロが月に1〜2回ねだるようになり、その度にサンジが鼻血を吹き出すとか…。
ゾロはどんなおねだりをしているのやら…。



ーーー

…記念文は馴れ初めには置かないつもりだったんですが…
書いてるうちにこれは馴れ初め(恋人未満)のほうが合ってるな〜って思っちゃいまして…。

まぁ、楽しんでいただければ(*^^*)

…てかゾロちゃんお菓子作りって…しないだろうなぁ…。
ま、いいか。
うちのゾロちゃんは乙女!!(笑)

happy valentine\(^o^)/

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