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コックさんの愚痴 2
「こんのクソゴムーー!!俺だって…ゾロとキスしてぇのに〜〜!!!」

思わず…思わず足がでてしまったのは俺が短気なせいなんかじゃないと思う。
そもそもルフィはゴムだから打撃は効かない。
自慢の蹴りも無意味だ。…が、思わず放ってしまった蹴りはガキン、という固い金属音とともに止められた。
足の先にあるのは一本の刀
白塗りの鞘が美しい、ゾロの刀だ。

「ゾロ、サンジが船長の座を狙ってるぞ!相手しろっ!

「了解、キャプテン」

そんな会話がルフィとゾロの間で交わされ、言い終わったルフィはどこかへ伸びていってしまった。
残されたのは鞘に収まったままの刀でサンジの蹴りを止めたゾロと…
蹴りを止められた不自然な体勢で固まるサンジだけ…。

「一回お前と戦ってみたいと思ってたんだか」

ゾロはにやっと不敵に笑う。
戦闘モードのそれはそれは獰猛な顔
普通の神経さえ持っていたなら畏怖さえ覚えるはずなのに…

ーそんな顔も似合うよなぁ

とポケェとしていたサンジは馬鹿なのだろう。
ていうか馬鹿だ。
そんなことをしているうちにシャランと刀を抜かれてしまった。

「え…いちおう…逆刃でとか…」

「んな気遣いお前に必要かよ」

「…必要だよねっ!?」

「へっ!行くぞ!!」

「ちょっ、聞いてる!?」

ガキンガキンッ!ドゴッ!!バキッ!!………

仲間なんだし峰打ちだよな、と思っていたサンジの予想に反してゾロは言葉通りに真剣の刃を振るってきた。
まだ死にたくはなかったサンジはその足技を余すこと披露し、ゾロとやりあった…。

まあ、二人とも殺気は出していなかったうえにゾロは三刀のうちの二本が折れて使えない状態だったので怪我というほどの怪我はなかったのだが…。

数十分後…どちらともなく離れ、足と刀を下ろした。

「やっぱりお前と戦うの面白いな!ルフィは避けれなそうな攻撃は受けようとしちまうから思いきり攻撃出来ねぇんだよな。な、これからもたまにはやろうな」

にこぉ、と…可愛らしい笑顔を向けられて…Noと言えるだろうか…?
その笑顔に見とれ、こくんと頷いてしまったサンジにゾロは非常に嬉し気に去っていってしまった、、、。

「…え、?」




それから…ゾロはサンジのことを喧嘩仲間と見るようになってしまい…ルフィは相変わらずゾロに“仲間の”キスをしている。
しかも(仲間と認めているやつの言うことは)信じやすいゾロにあることないこと吹き込まれ、ゾロのやサンジに対する態度は固くなっていく一方だ…。
…いや、ゾロを前にすると緊張してしまい上手いことを言えず、逆に悪態をついてしまうサンジも悪いのだが…。



……
…………
………………



「で、ですね。会ったらすぐ喧嘩みたいになってしまって…俺はもっとゾロと話してみたいのに…。いや、今の関係もゾロが俺を意識していると思えば嬉しいんですが…」

でもでも、とべそをかきながら言うサンジくんは正直…うっとおしい。
はぁ、と心の中だけで溜め息を吐くとナミはちらりと壁の時計を見た。
時間は5時45分
そろそろね、と思った丁度その時…

「サンジィ〜!!メッシィ〜!!」

良かった…。話しを聞き始めるタイミングを計ったお陰で計画通り、ルフィが乱入してきてくれた。
今の今までうじうじとしていたサンジくんもその一言でコックの顔となり、ヤバイと料理に集中し始めた。

ーーーああしてれば格好いいのに、ねぇ…。

サンジに対して呆れの眼差しを向けてたいたナミは思い出したようにルフィを見て「今日は良いタイミングだったわよ」とポケットから飴玉を出してルフィに渡した。
因みにそれは数日前にサンジから貰ったものだったりする。(…憐れ、サンジ)
それから…喜ぶルフィの手がそれでも離さない緑を見る。

「…聞こえてた?」

「…聞かせた癖に」

そーねぇ、とぺろりと舌を出しながら言うとゾロは一瞬嫌そうな顔をして…それから不思議そうにナミを見た。

「で、何であいつは俺と話したいんだ?喧嘩はしたくないってことか?」

見当違いな方向へ行こうとするゾロ。
成る程。重度の方向音痴だ。
しかし、ゾロのサンジとの喧嘩は勘を鈍らせない為の訓練でもあるのだ。今さら無くなるのは…少し困る。

その顔は仏頂面で、しかし瞳は揺れている。
なんだか迷子になった子供のようで、ナミはクスリと笑った。
…目の前の男は迷子になっていたとしても絶対に不安にはならないだろうが…。

「大丈夫よ。サンジくんも今の関係は嬉しいって言っていたでしょ?喧嘩ばかりじゃなくて少しは話もできるような仲間になりたいって言いたいのよ。」

仲間、という言葉を強調し告げると仲間、と呟いた。


ーーーねぇサンジくん、この可愛い可愛い私達の魔獣は“仲間”に慣れていないの。気付いてる?


だから、とナミは続ける。

「サンジくん夕食の支度遅らせちゃってるから仲間として助けてあげて?」

こくんと頷くゾロにナミは心の中で特別にタダで良いわよ、とサンジに呟いた。
いつも船長にゾロを取られてしまい、自分はキノコでも生やしそうな勢いで仕事をするサンジくんにちょっとした労いだ。
俺も俺も、味見させろ〜、と喚く船長を押さえ込み、ゾロがやって来たことにより動揺してお皿を落としたらしいパリンというおとをBGMにナミは言う。

「今日も平和ね〜」

未だ影の薄いウソップが突っ込んだとか突っ込んでないとか…。


(いや、ここ海賊船…だよな??)



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あきゅろす。
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