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コックさんの愚痴
麦わらの一味に戦うコックさんであるサンジが仲間に加わってから一週間が経った。
サンジは今、己の城であるキッチンで…泣きながらホットケーキのタネを作っていた。
因みに…号泣である。

牛乳はもうそろそろ使いきってしまわないと傷んでしまう。小麦粉もその分少し増やして…

流石は一流コック…その動きは的確で素早い。…ただし目からは滝のように涙が流れているが…。

あんなに泣きながら計りなんて見えているのかしら、とナミはリビングの机の上に海図を広げながら眺めていたのだが、サンジはダバダバと泣きながらもその雫は一滴も料理の中には落とさないのを見て、妙なところで関心をした。

…が、いい加減鬱陶しい。

「…どうしたの?」

しょうがなく、愚痴を聞いてあげることにした。
黒いスーツに包まれた肩がピクリと揺れた。
どうせゾロのことでしょう、と追い討ちをかけるとその青い瞳にじわりと涙が滲んだ。
その顔に普段の自称ラブコックの面影は微塵もない。
でも、でも、とチラチラと目線を送られ…突っ込んでくださいオーラをバンバン出してたくせに、とイラリとする。
なんかもう、面倒くさくなってしまい…魔法の言葉を使うことにした。

「さっさと言わないとゾロにあることないこと吹き込むわよ♪」

「言わせて頂くので止めて下さい。」

即答だった。

そう、サンジがこの船に乗り一週間だが、すでにゾロの騙されやすさは身に染みている。
戦闘モードの時や上陸で気の張っている時は別だが、海の上で仲間しか周りにいないと気が緩むのだろう。
そんな時のゾロには年相応…もしくはそれより少し幼い可愛らしさがある。

…が、その反面…良く言えば素直、悪く言えば単純というか…天然というか…いつかナミとかナミとかナミとかに訳のわからないままお金を払わされるんじゃないかと心配になる性格をしている。

一番驚いたのはルフィがゾロの頬にキスをしていたことだ。
思わずクソゴムをひっぺがして、お前ら付き合ってんのか?と問いただした。
…ら、お前何言ってんだ?という目をゾロから向けられた。

え?何で??
俺なんか変なこと言った???

途端にオドオドし始めたサンジにゾロはいつもの堂々とした口調で言う。

「船長がクルーにキスをするのは挨拶なんだろ。」

……ハイ??
だから、と再びゾロは同じことを言う。
その口調にルフィに対する疑いのようなものは一切感じらない。

「…それ、誰から聞いたんだ?」

「ルフィ」

「………」

「………」

「ゾ…マリモ」

ゾロ、と言うことが未だに出来ない(照れて)サンジがマリモというと、途端にゾロの額に青筋が浮かんだ。

「あぁん?んだよクソコック?」

「お前、ルフィが他のヤツにキスしてるとこ見たことあるか?」

「…そういや、ねぇな。」

一瞬考え込んだゾロが今気付いたという風に言う。
そりゃそうだ。
船長のキスは挨拶だなんて聞いたこともなければされたこともねぇ…ってオイ

「騙されてんなよ!マリモ!!」

「騙されてねぇよ!!…ルフィ、騙したのか?」

思わず怒鳴り返したゾロだったが、流石に不審に思ったのか、ゾロからひっぺがされた時からサンジに腕を掴まれたままのルフィに尋ねた。
ルフィは…

「騙してねぇぞ、ゾロ」

サンジの呼べなかった名を易々と呼び、サンジの腕から抜け出して笑いながらゾロに近付く。

「イーストとノースじゃあ文化?が違うんだ。サンジが知らなくても仕方ねぇけど船長のキスは本当に挨拶なんだ。
俺は気に入ってるヤツにしかしねぇけどなっ」

にしし、と笑い…サンジの目の前でゾロの頬に口付けた。

「なっ!!」

声を上げたのはサンジだけだった。
ゾロは、というと…納得したような顔をしている。
…騙されやすすぎだろっ!!



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あきゅろす。
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