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出会い(ナミ視点)
うちの主戦力の一人、三刀流剣士のロロノア・ゾロはたいへんモテる、と気付いたのはバラティエでゾロとウソップとで食事をしていた時だった。

勿論、ゾロが戦闘モードではなかったことも関係しているのだろう。
ふと気が付くと女性が側にいるのは当たり前…。
ゾロが笑顔を見せると、花の香りにつられてよってくる虫のように…男女問わず人か寄ってくる。
そして驚いたのは、ゾロがそのナンパを断ることがやけに手慣れていたことだ。

その頃からルフィはゾロが好きなのかなー、となんとなく気付き始めていたから、ルフィも大変ね、と他人事のように思っていた。
けど、ココヤシ村で助けてもらって改めて船に乗り…頭を抱えたくなった…。


………ゾロに惚れたヤツが……増えてる…。


ココヤシ村の前に寄った海上レストラン・バラティエで仲間になったサンジ君…
んナーミーすわぁーん、なーんてうつくしいんだ〜、なんて馬鹿みたいなことばかり言っているけれど…彼もゾロに惚れてしまったうちの一人だろう。
見て直ぐにわかったわよ。

ゾロと話している時の顔は真っ赤で

ルフィがゾロに抱きついた時は違う意味で真っ赤で

ルフィがゾロと付き合っているかもしれないと思ったらしい顔は真っ青で…

よくこうもころころと表情を変えられるのね、と関心さえしてしまう。
これでもしも惚れてないっていうんなら5万ベリー払ってもいいわよ。

まぁ…それほどまでに人を引き付けるゾロの魅力は…正直分からなくもない。


「ナミ、ナミ」

少し低めの声に振り返ると件の緑頭、ゾロが目線を下に立っていた。
不機嫌そうな仏頂面だが、不安そうな表情にも読み取れるのは仲間として少しは一緒にいるからなのか…。

「剣…折れた。」

どうしたのか、と思っていると唐突にゾロが呟いた。
確かに、ゾロの腰には一本の刀しか残っていない。後の二本はバラティエで私が去った後に現れたという世界最強の剣士・鷹の目のミホークという男に戦いを挑んで折られてしまったとルフィから聞いている。

この男はきっと、ものすごーーーく、悔しかったはずだから…敢えてその経緯には触れない。

ただ大事な刀が折れてしまって、どうにかしたくて、相談に来るのが私ということに少し嬉しくなる。

例えそれが航海士として、船の財布の元締めとしての立場からのことだとしても。

大丈夫よ、と自分よりも高い位置にある頭を背伸びをして撫でる。
意外と柔らかい髪がくしゃりと崩れる。

「もう少ししたらローグタウンに着くわ。大きな町だから刀も売ってるわよ。」

そう言ってあげると強ばっていた顔が綻ぶ。

あぁ、もう。可愛いんだから。

正直、ゾロのことは大好きだ。
でもそれは恋愛感情というものではなく…多分、家族の兄や弟に対して抱くようなもの。
さっきゾロのこと好き?と聞かれ頷いたウソップだって故郷にカヤという可愛らしい彼女がいる。

だから… チラリと目を向ければ甲板には未だに膝を付いているサンジ君の姿


敵はルフィしかいないんだけど…
もうしばらくは悩ましておきましょう♪
ふふ、と笑うと鍛練をしていたゾロが野生のカンで何かを感じたのか“魔女”とぽそりと呟いた。

「失礼ね。男を手のひらで転がすのは女の特権よ。 …いえ、男でも特権と言えば特権よね。特にゾロ、あんたには必要よ!!」

途中から思わず強くなっていってしまった言葉にゾロはふーんと分かっているのか分かっていないのか。
だから特別にただで教えてあげるわよ。男の転がしかた。

「まずはサンジ君におやつが食べたいって言ってきて。それからルフィには刀が欲しいから早く陸に行きたいって。そうしたらローグタウンに着いた時にお金貸すわよ。」


………こうしてメリー号にはおやつの習慣ができ、ローグタウンへ行く日程は一日も崩れることなく進められた。



一流コックさんの作った美味しいおやつを食べながらナミは言う。




「男を手のひらで転がすのは女とゾロの特権ネ」


…と。

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