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夜は一緒に…
今日の寝ず番は珍しくナミだった。
温かい夜食と紅茶を手にマストを登る。
途中、音で気付いて顔を出したナミにサンジはニコリと笑みを浮かべ、するすると残りを登り終える。

「どうぞ、スペシャルな夜食です。」

トレーを渡し、そそくさと降りていこうとするサンジをナミが止める。

「珍しいわね。ゾロもサンジくんも寝ず番替わるって言ってくれないの」

にこっと、可愛らしく言うと…サンジの眉が情けなく下がった。

「スイマセン…今日はあいつを寝させてやりたいんです…。」

「…ふーん、何だかサンジくんがいれば寝れるみたいな言い方ね。」

「…え、えっと、ナミさん何か怒ってる?」

「…赤面するゾロなんて私見たことなかったわよ。」

「俺もです。」

「でもサンジくんに対しての反応だったわよね。」

「……まぁ、はい。」

顔をでろー、と崩しながら答えたサンジにナミがため息をつく。
ビクッと固まったサンジに…

「ゾロを泣かせたら酷い目に遭わせるからね。…ルフィが。」

「…キモニメイジテオキマス。」

「…さっさとゾロのところに行ってあげたら?」

ナミはにっこりと、極上の笑みを浮かべて言う。
この時ばかりはサンジにもときめくような余裕はなかった。

そそくさとマストを降りていったサンジを、温かな夜食を口にしながらナミ眺める。

「ふふふ。面白いことになってきたわね。明日ゾロに問い詰めないとっ♪」

実に楽しそうに呟くのだった。



きぃ、と男部屋を開くと床に転がるルフィ、ゾロ、ウソップ…。
取り敢えずいびきのうるさいルフィを蹴っ飛ばして(残念ながらこのくらいじゃルフィは起きない。)ゾロの側に行く。

すぐ横に座り頭を撫でるとその体がピクリと動いた。
ゾロの体にかかっていた毛布を取り、キッチンから持ってきた毛布をかける。

そのまま頭を撫で続けていると、もぞりと動いたゾロがサンジのほうへ向いた。
開いた翠緑の瞳と目が合う。
ゾロは何かを言おうと口を開き、、、けれど、何も言わずに再び閉じた。

瞳が左右に揺れ、顔を覗きこんでみると、意を決したようにその手を伸ばしてサンジの服を掴んだ。
少し驚いたサンジが直ぐに柔らかく微笑み、再びゾロの頭を撫でた。
くすぐったそうに首を竦め、目を閉じていたゾロだったが、目を瞑ったまま首を横に振る。

?と内心首を傾げていると、掴まれていた袖を思いの外強く引かれた。
ゾロにかけた毛布の上に倒れこむと、すかさず顔が押し付けられた。

…それから…ようやく、ゾロが口を開く。

「…コック、寝らんねぇ。」

「眠くないのか?」

「…寝みぃよ。頭ぐらぐらする。」

「目瞑ってれば寝られねぇか?」

「…寝られねえ。」

「前は夜も寝られたろ?今日だって寝られるさ。」

「前は…コックが…いた、から。」

「…今日だっているだろ。」

かぁ、と色付く頬を意識しないように答えると、ゾロは泣き出しそうな顔をした。

「コックも疲れてんだろ?俺が寝たらコックも寝るだろ?もし…夜に起きた時に一人だったらって思うと寝られねえ。」

きょとん、としたサンジにゾロは何だよ、と拗ねたような声を出した。
くく、と笑い声が洩れてしまい、ゾロの眉間に皺が寄る。

「悪かったなぁ!!俺だって柄じゃねぇとは思うけどよ!昼に笑って寄ってきて寝首をかく奴だっていたんだ。夜は…嫌いなんだよ。」

だんだん小さくなる声を、サンジはゾロの体の左右に手を置き、自分の体を支えながら聞いていた。
幸いにも横で寝ているルフィもウソップも起きる気配はない。
…ていうか、この体制若干きつい。

「…何か言えよ。」

「…“何か”」

「ふざけてんのかてめぇ」

「違えよ。何て言うか考えていたんだが…こうしたほうが早いか。」

言うと、サンジはゾロの毛布の中に入りこんだ。
ゾロを抱き締め、そのピアスの付いた耳元で囁く。

「これで一緒に寝られるだろ。朝、仕込みを始めるまでは絶対一人にしねぇから安心して寝ちまえ。」

「…絶対に、か?」

「ああ。約束する。」

「……サンジ」

「ん?」

ゾロがぎゅーっと抱きつく。
毎日毎日鍛練しているので若干痛い…(汗)

「…ありがとよ」

痛みを堪えていた所為で一瞬反応が遅れた。

「…え」

顔を覗きこんでも、ゾロはすでに夢の中…。
いつもよりも幼い安らかな寝顔になってしまっている。

「…ゾロ、、、お前、言い逃げ多くねぇか?」




END(笑)



ーーーーー

報われないサンジくん(笑)
なんだか穏やかな文になりました(*^^*)







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