命ーミコトー
2
「そういえば…。」
蓮見が口を開いた。首をかしげて唸っている。
「どうしたの、蓮見?何か思い当たることでもあるの?」
「いや…俺、あまり陽と話したことねえな、と思って…。」
「え?そうなの?」
藤家も少し驚いたように目を見開いている。まさか、ずっと一緒にいるのにそんなに話さないなんて。まあ、蓮見は最近記憶を失っていたし、陽さんもあんまり話すタイプのように思えないんだけど。
「でも、気配とかは感じるでしょう?陽さんは大丈夫?いなくなってない?」
蓮見は苦笑いしつつ頭をかいた。あ、ダメだこれは。気配も分からないのか…。
「蓮見先生って鈍いもんね。」
「なっ!それとこれって関係あるのか?」
ちょっとは関係すると思う。私は心の中で頷いた。
「あ、じゃあ、呼びかけてみてよ。もしいなかったら光さんも陽さんが一緒にいるかもって事でそれはそれで安心だし。いたら光さんがどこにいるか分かるかもしれないし。」
「お、おお。」
蓮見は軽く咳払いをすると、目を閉じた。しばらくすると蓮見は目を開け、頷いて見せた。
「俺の中にいるみたい。だけど、今何だかすごく弱ってるみたいなんだけど。だから、出てこれないって。」
「そうなの?陽さんどうしたんだろう?」
確かに実体化するのってかなりの力を使うんだって前に言ってたけど、しばらく出てきてなかったし力なら溜まっているんじゃないかって思ってたんだけど…。
「蓮見先生の記憶を戻すように実は陽さんも力を貸してたんじゃないかな?」
藤家の言葉に私も納得した。
「うーん…じゃあ、とりあえず探しに行こうか。」
私は一人立ち上がった。だけど二人ともついて来てはくれない。どうしてだ?
「探すって言って、どうやって探すんだ?」
「う…。」
「俺が呼びかけても返事が無いんだよ?」
「う…。」
「しかも相手は実体が無いんだし。」
「うう…。」
蓮見と藤家の両方に冷静に突っ込まれて、私は再び腰を下ろした。どうすればいいんだろう…。そこで私ははっと思いついた。
「そうだ、寝ればいいんだ!」
「「は?」」
「私、寝たらミコトの巫女の記憶が戻るんだよね。そしたら、何か光さんに関係する大事な記憶が分かるかもしれないし。」
「……その記憶って欲しい記憶がちゃんと手に入るのか?」
そう言われるとそうだけど。でも、今出来ることをやるしかない。それに、私にはミコトの巫女本人がついていてくれている。確信は無いけれど、何だか大丈夫のような気がするのだ。
「とりあえず、やってみるから!1時間くらい経ったら起こして。」
「……分かった。」
私は早速ベッドに横になった。部屋に人がいる状態で寝るのって何だか絶対に可笑しいけれど、今はそんな事は考えないでおこう。
「光さんの記憶、光さんの記憶、光さんの…」
私はそう念じながら、すぐに眠りについていった。さっき気を失って寝ていたばかりだと言うのに、あっさりと落ちていった。
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