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命ーミコトー
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この時間は永遠だと思いつつも、やっぱりそうはいかなかった。二人だけの時間は鳴り響く携帯によって終わりが来たのだ。

携帯が鳴ったことでふと我に帰り、私は慌てて蓮見から離れると携帯を手に取った。舌打ちが聞こえたような気がするが、気のせいだろう。うん。

「もしもし?」

『もしもし、俺だけど。』
「あ、藤家?」
「は?藤家?」

私が名前を出した瞬間、蓮見は更に少し大きな声で耳元で叫んだ。当然電話の向こうにも伝わっているだろう。

『その声は…蓮見先生?今一緒にいるの?』
「あ、…う、うん。」

やっぱり藤家にちゃんと報告すべきだよね。でも、藤家のことを考えるとそんなのろけみたいな事を言っていいのだろうか。それに今蓮見本人が近くにいるからそんな事言えないし…。

『……そっか。良かったね。』
「え?」
『ちゃんと言えたんでしょう?その先生の様子だと記憶も戻ったみたいだし。…うまくいったみたいだし。』
「藤家…。」

 言葉にしなくても、藤家はちゃんと電話越しに感じ取ってくれたみたいだ。

「藤家…良い男だね。」
『ふふ…でしょう?いいよ、いつでも乗り換えて。』
「いや、遠慮しときます。」
「おい榊、何話してるんだ?」

意外と短気なのか、嫉妬深いのか、大人気ないのか。蓮見が少し苛立った口調で割り込んできた。
 

 蓮見よ…。お前より八つ下の藤家のほうが大人の余裕があるように思えてしまうのは私だけだろうか。少し苦笑いしてしまう。


「で、藤家、どうかしたの?」

早速喧嘩などしたくないので、私は藤家に単刀直入に聞いた。すると、藤家はああ…、と少しためらうように間を空けた。

『…実は光の様子が変なんだ。
「光さんの…?」
『うん。少し会って相談したいんだけど。あ、記憶が戻ったんだったら蓮見先生にも。』


藤家がこうして相談するなんてきっと余程のことだろう。私はもちろん了承した。


「あ、ちょうど蓮見もいるし。うちの家に来なよ。」
『榊の家…?え、蓮見先生も一緒に家にいるの?』
「うん。」
『……分かった。急いでいくから。』

そう言うが早いか、藤家はブツリと電話を切った。

「何、こっち来んの?」
「うん、多分今慌てて向かっているみたい。」


蓮見は何か思い当たることがあったのだろうか、蓮見はケラケラと笑い出した。

本当に驚くほど早く藤家は家にやって来た。それでも汗が出にくい性質なのだろうか。息は上がっているが、こちらから見ればたいそう涼しい顔をしているように見える。

部屋に入ってくる際、ニヤニヤ笑っている蓮見が癇に障ったのだろう。平然とわざとその足を踏みつけていった。

「で、光さんいつから見つからないの?」
「…毎日話したりしてるわけじゃないから正確には分からないけど、最後に話したのは…うん、榊と二人で先生の家に行ったときかな。あの修羅場で榊が先に帰った日。」

藤家はチラリと蓮見を横目に見ながら言った。わざとだろう。蓮見は苦い顔をしている。そういえば、あの後藤家は残ったのだろうか?まあ、今はそれはどうでも良いとして。

「いつもは呼びかけたら答えてくれるんだけど、何度やっても返事が無くて…。あのお守りをはずして鏡で見てみたら目の色も違うし…。」

確かにそう言われれば、今日は藤家あのいつも足につけているお守りをつけていない。


「何か分からないけど胸騒ぎもしているし…。」


ずっと一緒にいた藤家がそう感じているのだ。何かあったかに違いない。



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